Act.7「VS.」
研究所で事のあらましを話した日の翌日……
「ふう……やっと終わったぁ……」
カイトは学校の授業を終えたところだった。
んー、と声を発しながら伸びをする。
「よく言うぜ、授業中ずっと寝てたくせによ」
ギンザが呆れながらもツッコミをいれる。
「ホント、よく寝るわね〜」
ミイネはその授業中に眠りっぱなしという態度に逆に感心していた。
「おう!なんてったって育ち盛りだからな!」
胸をドンとを張って誇らしげに言う。
「はぁ……あきれたぜ…… で、どうする? 今日は」
ギンザの問いにカイトは、
「決まってるぜ! 修行だ!」
と、これしかないと言わんばかりに即答する。
「「はぁ!?」」
ギンザ、ミイネ二人が同時に声を上げる。
「修行だよ!ブランク社がいつ何時攻めてきてもいいように、 修行すんだよ!」
ギンザはやれやれと思いつつ、カイトへ促す。
「いや、確かに奴らが狙ってんのはお前の持ってるメタルコアだけどさ……
奴らの目的はあくまで世界を変えるって事なんだろ?
だったら、電力発電所を襲ったのだって何かワケがあってだ……」
「よっしゃ!早速行くぞ!いつもの公園に集合だ!遅れんなよ!」
カイトはギンザの話を途中でさえぎると席から立ち上がり、
猛スピードで教室を飛び出してしまった。
「人の話は最後まで聞けっての!ったく……」
「あーもう! ギンザ! 追いかけるわよ!」
ギンザの返答を待たずにミイネも教室を飛び出した。
「おい!待ってくれよミイネーッ!」
―数分後、オキナミ町公園―
「あいつら遅いな! なにやってんだよ!」
『お前が早すぎるんだろ……』
カイトは普通15分はかかる小学校からオキナミ町の公園までの道のりを、
なんと5分で来てしまっていた。
そして何故か軽く準備体操をし終えると、
「う〜ん、しゃあねえ! 一人で先にやっ……」
『お主が……北条カイトか……』
「えっ!?」
急に後ろから声がしたので振り返ると―――……
そこには水色の装甲をした、
二脚タイプの剣を持ったメダロットが立っていた。
見たところメダロッターがいない…… 野良メダロットというヤツだ。
「そうだけど……なんか用か?」
『拙者の名は「ドラグロイ」。
ブランク社に雇われている……竜騎士型メダロットだ』
『ブランク社だと!?』
オメガの驚きをよそにドラグロイと名乗ったメダロットは、
手に持った剣をカイトへ向け―――……
『お主の持っているメタルコアを奪取せよとの命を受け、参上した。
……痛い目を見ないウチに、渡してもらおうか』
「そんな!?もうメタルコアがオメガの体にあるのがばれてたのか!?」
『さあな……詳しい点は拙者にも分からん……
だが依頼は依頼だ…… 拙者は実行するのみ。
さぁ……どうする?』
どうやらブランク社はドラグロイに事柄をあまり事細かく伝えていない様子だった。
「まぁ、いいか! やろうぜ! ロボトル!」
カイトはあっけらかんな返事をして、メダロッチを構えた。
『いいだろう……後悔するなよ?』
ドラグロイはカイトへ向けていた剣を下げる。
『……お前のその軽すぎる感覚、いい加減に直せ……』
オメガがカイトの細かさを気にしない相変わらずの性格に思わずため息をつく。
「考えとくぜ! そんじゃま、いくか!メダロット、転送!!」
メダロッチからオメガが転送される。
「んでもって、バトルフィールド、展開ッ!」
宣言とともに、球体のバーチャル空間『バトルフィールド』が展開される。
『バトルフィールドヲ展開シマス…… 。今回ノバトルフィールドハ「さばく」デス』
「ゲッ!砂漠かよ!ついてねえなあ……。」
『しかし相手も二脚タイプのメダロットだ……。条件としては五分五分だろう』
フィールドがあたり一面に展開され―――……
『―――ロボトルファイト』
『―――参る!!』
メダロッチの音声とほぼ同時にドラグロイがそう叫んだ瞬間、
一気にオメガの目の前まで間合いを詰めた!
『何!?』
そしてそのまま―――右腕部のソードで居合のごとく切り裂く!!
『ぐっ!!』
慣れない砂漠で、緊急回避は出来そうもないと考えたオメガは、
上体をそらし、避けようとするが――― 剣の切っ先が胴体をかすめてしまう!
「オメガ!!」
『オメガ、頭パーツダメージ24%』
メダロッチがオメガのダメージを告げる。
胸の赤いハッチが横にパックリと割れ―――『メタルコア』がちらつく。
『くっ……!!』
オメガは思わず胸を押さえて後ろに飛び退く。
『ほう……そこにあったか。
イカンイカン、拙者としたことが丸々たたっ切るところだった』
剣を肩にかつぎ、ドラグロイは余裕のような発言をする。
「くっそお、なめやがって!
オメガ、ヤツはすぐに動けないハズだ!ライフルを!」
カイトはバトルフィールドが「さばく」で足を取られ、
すぐには動けないと判断し、オメガに指示をする!
『……ああ!喰らえっ!!』
オメガは右腕を構え、ライフルを発射する!
『甘い!動けぬのなら――― 防御するまでだ!』
ドラグロイはシールドがついた左腕を構え、防御態勢をとる!
弾丸は命中こそするも―――……
『ドラグロイ、左腕パーツダメージ8 %』
大したダメージにはならなかった。
「やっぱ、あの左腕は防御用か!やっかいだぜ……」
『カイト、気を引き締めろ!
レインと同じ……イヤ、それ以上の相手かもしれん!』
オメガがドラグロイの強さを感じとったのか、カイトに忠告する。
「分かってる!」
ドラグロイはライフルが命中した左腕から発するケムリを振り払い―――……
『さあ!まだまだこれからだ…… 拙者を失望させないでくれよ?』
再び剣を構えるのだった。
その頃、ギンザとミイネの二人は……
「や、やっとついたぜ……」
「あいつ、足……はやすぎ……よっ」
肩で息をしながら、公園の前まで来ていた。
疲れからか、その場でへたりこんでしまう。
「はぁ……あれ?」
「どうしたの?ギンザ?」
ギンザが急に立ち上がり、耳をすますしぐさをする。
「……?なんかすげえ音がする……?」
ミイネもさっと立ち上がると、耳を公園の方に傾けた。
すると、何か……地鳴りに近い音が聞こえるのだった。
「ホントだ……何かイヤな予感がするわ、行ってみましょう!」
「……わかった!」
二人は公園の音のあった方角へ足を急がせた―――……
『ぐ……!』
オメガは、右腕と脚部パーツが破壊されるまで追い込まれていた。
『どうした?その程度ではないだろう』
ドラグロイはパーツは壊れてはいなく、
ところどころに軽いダメージを追っているだけだった。
「オメガ!!いけるか……!?」
『ああ、カイト……次の指示を頼む』
オメガがダメージのためかあまり生気のない声でカイトに尋ねる。
「……頭パーツのミサイル発射だ!」
『……了解』
ミサイルがドラグロイめがけ、発射されるも―――……
『ムダだ!!』
剣で真っ二つにされ、不発に終わった。
二つに分かれたミサイルが空中で爆発し、辺りに砂ケムリが広がる。
『フン、あっけな……!?』
砂ケムリはすぐに収まったのだが、
ドラグロイは正面にいるはずのオメガがいないことに気付き、
途中で言葉を止める。
「バーカ! そいつはオトリだよ! オメガ!」
『喰らえ……ッ!』
オメガは煙に紛れドラグロイの背後に回りこんでいた!
そしてそのままガトリング攻撃に移行する!
『―――しまった!』
振り返ろうとするが間に合わず、左腕部にガトリング攻撃が直撃した!!
『がぁ……!』
『クリティカル!ドラグロイ、右腕パーツダメージ89%。機能停止』
右腕パーツの装甲が砕け散り、巨大な剣が重い音を立て地面へ落下する。
「やった!剣を持ってる方のパーツがこわれたぜ!」
『これで奴はもう……頭パーツを使わざるを得ない』
そう、ドラグロイの左腕パーツはシールドのような形状であり、
攻撃には使えないとオメガは判断したのだ。 しかし―――……
『……この勝負、拙者の勝ちだ』
「なんだって!?」
ドラグロイは自信に満ち溢れた様子で頭パーツに指を当て、言い放つ。
『この頭部の攻撃で……主らは敗れる!』
その言葉と同時に、地鳴りが鳴り響き始める。
そして、バトルフィールドの地面の砂に波紋が広がっていく……!
「なんか……ヤバイ雰囲気だぜ……」
カイトは思わず気おくれするも―――……
『……カイト! 迎え撃つぞ!「アレ」を使うんだ!』
オメガは何か考えがあるようだった。
「アレ」について何かをカイトは少し考えると、ハッと気づき―――
「……そうか!よし、一か八か…… 「アレ」、やってみるか!」
メダロッチを構えるのであった。
―――ドラグロイの頭部攻撃とは……!?
そして、カイトとオメガの言う「アレ」とは?
Act.7・・・完