Act.6「明らかになる真実」


電力発電所の事件から数日後…… 

カイトとオメガは寺原に電力発電所事件のことを話そうと、

メダロット社へ向かっていた。

メダロット社までは、少し距離があるため徒歩では辛いものがある。

なので、町内には直通バスが運行しているのだ。

ちなみにカイト達は以前もそれを利用して、メダロット社に訪れていたのだった。

ギンザ、ミイネにはブランク社の事もあり、面倒になりそうなので、

カイトは黙って行こうとしていたのだが…… 

「なーんでお前らがついてくるかなあ」

何故かバス停で既に待ち伏せしていた
ギンザとミイネにめんどくさそうに言う。

「なんでじゃねえよ!俺らだって事件に関わってるんだからな!」

「そりゃ、そうだけださあ……」

「そうよ! もしかしたら頑張ったお礼とか言って、

 レアなパーツとかもらえたりするかもしれないじゃない!」

「そうそう!それもある!」

(こ、こいつら……)

カイトはあきれて、何か言おうとするが―――……

「それになぁ!お前が上でモタモタしてる間、俺たちは大変だったんだぞ!」

「ホントよ!発電所の人が来てくれなかったらどうなってたか……」

そう、カイトが操作パネルと乱闘している間ギンザ達は、

襲撃が止まないキルヘルオウガと悪戦苦闘していた。

そんな中、緊急事態をの報せを受けた発電所の人員が駆け付け、

発電所のコントロールを正常に戻してもらったのであった。

コントロールが正常に戻るとともにキルヘルオウガも機能停止し、

事態は事なきを得たのだった……

「だ〜か〜ら〜、それは何度も謝ってんじゃんか〜」

まだ言うかとけだるそうに嫌な顔をして言う。

「じゃあ、駅前のケーキ屋で私たちにおごったら許してあげる♪」

「おお!そいつはいいな!」

オキナミ町の駅の前ケーキ屋というのは、

有名なメーカーが展開している全国チェーン店だそうだ。

値段がバカ高く、
小学生のお小遣いでは手が出しにくい値段である。

ミイネのお気に入りのお店の一つらしく、母親とよく食べるようだ。

「カンベンしてくれよ……」

『……おい。どうやら着いたみたいだぞ』

メダロッチからのオメガの声から数秒後に、アナウンスが流れバスが停車する。

カイト達はお金を払ってバスから降りると同時に、

目の前にあるメダロット社をおもわず見上げた。

「やっぱ……でっかいよな……」

「ああ。俺もヴルム少し前に来たけどな」

カイトとギンザは以前オメガとヴルムの現在のパーツを受け取った際に一度来てはいるが、

それでもつい上を見てしまう。

「あたしは来たことないけど……。すごいわね〜」

しばらくの間、3人はそのままメダロット社を見上げていたのだが……

『早く行くぞ。恥ずかしい』

オメガの声に気付きハッと辺りを見回すと、

三人の様子は通りすがる人々の注目の的となっていた。

それを見かねたカイト達は慌てて研究所の中に入った。

「オ、オメガ!早く言ってくれよ!」

『まったく……ここまで誰一人気付かないとは……

 3バカ決定だな』

「「「うるさい」」」

そんなこんなで、カイト達は寺原の研究室の前に着いたのだった。

カイト達は研究室の自動ドアを開け、中へ入っていく。

「寺原さん、こんにちは!」

机に向かってイスに座っていた寺原は立ち上がり、カイトたちの方に向き直る。

「やあ!こんにちわ、カイト君、ギンザ君と……その娘は?」

「ああ、こいつは……」

いきなりミイネがカイトを手で横に押しやり、ムリヤリ前に出る。

「初めまして。あたし、篠原ミイネで〜す!

 こいつらとは幼馴染で〜す♪」

(ゲッ……何だこいつ……全然普段と態度が違うぞ……?)

猫かぶりと普段とのギャップに、カイトは内心引いた。

「あ、ああ。はじめまして、ミイネちゃん。

 僕は寺原。ここの研究員をしています。もうカイト君たちから聞いてるかな?」

「はぁい、そりゃもう!ところで、実は電―――……」

「だーっ!タンマタンマ!オレから話すから!」

ミイネの言葉をさえぎり、カイトが横入りする。

「―――?何かあったのかな?」

「はい、実は―――」

ぶー垂れているミイネをよそに、カイトは数日前の事件のことを話す。

電力発電所や、ブランク社の幹部と名乗った―――『レイン』の事……

ギンザ達は最上階で起こったことは知らなかったので、

下のフロアの様子を話したのだった。

「ほう、つまり……」

「はい、そいつが言うにはもう計画ってやつが進んでいるみたいなんです」

寺原はどうしようかと少し悩んだ末、

「……仕方がない。この際、話そう。

 以前話した、3年前の時の話(Act.3参照)―――覚えてるかい?」

カイトはコクリとうなずく。

「はい、ブランク社の親玉が計画を話していたんですよね?」

「あの話には……続きがあったんだ―――」


 

 

 


「―――だが、どうする?このままでは計画が進まん」

「アレを使えば……可能かも知れません」

「……『メタルコア』だな」

「しかし、未だどこにあるか分かりません……」

「だからお前たちが見つけるのだ……

 ブランク社幹部がな……頼んだぞ、『レイン』」

「はい。社長……いえ、『ラスワール』様……」

 

 

 


「……と、こんなところだ。

 話してたのは社長の『ラスワール』、そして青髪の『レイン』―――

 そのレインの勝利したんだ、大したモノだよ」

「いやあそんな!
とんでもない強さでしたが、オレにかかれば―――」

『一歩間違えれば負けていただろう……バカ』

調子に乗ろうとするカイトにオメガが思わず口をはさむ。

「なんだとお!」

ギャーギャーと言い合いをはじめるカイトとオメガをよそに、

「その、必要って言っている―――

 『メタルコア』って……なんすか?」

ギンザが当然の疑問を質問する。

「―――『メタルコア』は、メダロッターの感情に反応する特殊金属だ。

 感情によってはメダロットがとてつもないチカラを発揮するらしい」

ミイネがはいはーいと手を上げる。

「どうしてその『メタルコア』が必要なんですか〜?」

寺原はこれも話すべきなのかと少し悩む様子を見せるが、続ける。

「……この世には、正の感情と悪の感情が存在する。

 奴らは悪の感情を利用し、ある『存在』を呼び覚まそうとしている―――!」

「ある……『存在』……?」

「それは……まだ分からないんだ、すまない」

「……それで、メタルコアはもう見つかったんですか?」

少し間をおいた後、ギンザが質問をする。

「ああ、何とかこちらが見つけたよ……そしてもう、オメガ君の体―――

 オメガビートル・プロトのボディに埋め込んでいるんだ」

「えええええっ!?」

カイトは目をとびださんばかりに大きく見開き、驚く。

『オレの……体に……?』

 オメガもさすがに驚いている様子だ。

「どうしてそんな大事な物をカイトなんかに渡したんですか?」

ギンザは思わず突っ込んでしまう。 

「なんかはねえだろなんかは!」

寺原は少し間をおくと、

「それは……この前カオスメダルが盗まれたときのように、
メタルコアも

 あっさりと盗まれかねないからね。それで感情値に適性があるテスターを募集して、

 託そうと思ったんだ。メタルコアもやつらの手に渡ってしまうのは避けたかった……」

「そうだったんすか……」

ギンザは何とか納得した。

そして、寺原は何かを決意したように話し始めた。

「……計画の『存在』を呼びさます為にはカオスメダルと、

 メタルコアの両方が必要……と僕は推測している。

 オメガ君のボディ中にある事はじきにバレてしまうだろう……」

寺原はさらに話を続ける。

「ここまで巻き込むつもりはなかった…… だが、無理を承知でお願いする!

 カイト君!頼む!やつらの計画を止めるのを手伝ってほしい!

 このままでは、世界は―――大変なことになる!」 

寺原の懇願に対し、カイトは頭をボリボリと掻いて言う。

「……オレ、ガキだから世界とか良く分かんないケド、

 寺原さんにはオメガのパーツもらったりしていろいろ世話になってるし、

 なによりあいつらのやることが許せない!だから―――

 手伝いますよ!寺原さん!」

「カイト君……!」 

「俺も手伝うぜ。なーんか、腹が立つんだよな。あいつら」

「あたしも手伝うわ!」

ギンザ、ミイネも手伝う意思を見せる。

「お前らもかよ!?別にムリしなくてもいいんだぜ?」

カイトは思わず驚く。

「ムリなんかするかよ、俺も寺原さんには世話になってるしな」

「それにここまで聞いちゃったら後に引き下がれないし……ね」

「……そっか、分かった!オレ達でヤツらの計画を壊そうぜ!」

「皆……ありがとう。僕にできることがあったら、何でも言ってくれ!協力するよ!」

はい、と三人は一斉に返事をするのだった。

 

 

 

カイトたちはその後少しすると、帰路についた。

寺原は、バスに乗るカイト達を見送りつつ、思う―――。

(『空斗』さん……これでよかったんでしょうか…… 

       イヤ、約束したんだ、もう後には引けない……!

 『ラスワール』、お前の計画は……僕が止める!絶対に……!)

 

 

 

 

―――特殊金属『メタルコア』の秘めたる力……そしてある『存在』とは……?

そして『空斗』とは誰なのか……?


Act.6・・・完

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