Act28 「道化」

   

長い階段を上り辿り着いた先に待っていたのは―――ブランク社幹部、リズだった。

ミイネはリズと1対1でロボトルするコトになり、新機体「ウィードナー」でリズを翻弄する。

しかし、リズも奥の手を隠しており―――?

  

  

「ホラ、どーしたワケ?」

リズはレフスにビーム攻撃をひたすら指示し、回避行動を続けるコルを煽る。

「コル!今はとりあえず避け続けて!」

『……了解!』

ミイネはコルに回避行動を続けるよう指示する。

だが……レフスの右手からカードを貼ったコトにより繰り出されるビームは止むことを知らない。

(おかしいわ…… 充填・放熱を考えると早すぎる……まさか!?)

ミイネが異変を感じたのを察したのか、リズが口を開く。

「オカシイとおもったでしょ?そう!もう一つのカードを貼り付けてるワケ……
 
 『ほじょチャージ』の効果をもったカードをネ」
 
そう、『ほじょチャージ』は、自身や味方の行動スピードをアップさせる行動だ。

リズはビームを撃つ合間を縫い、密かにカードを貼り付けていたのだった。

「ケド、なかなか避けるからもういいワケ」

リズはそう言うと、レフスは右腕に貼り付いたカードを剥がす。

「コレなら……避けらんないでしょ?」

そしてすかさず右腕に貼り付けると、小型ではあるが―――レフスの手のひらからミサイルが放たれた!

「まずいわ、……コルッ!」

ミサイルを目の当たりにしてミイネはすかさず指示を出す。

『分かった、やってみる!』

コルはミサイルを撃ち落とそうと、タイムアタック攻撃をミサイルに向け放つ!

しかし、ミサイルが小さいためかタイムアタック攻撃は空を切り、

ミサイルがコルの右腕部に直撃し―――辺りにケムリが広がる!

「威力はさほどじゃないケド、アンタのメダは装甲があまり厚くないコトは分かってるワケ。
 
 コレで後は脚部を壊せばもう身動きは――― ……!?」

突然、リズが途中で言葉を止める。

そう、ケムリの中から先ほど放ったはずのミサイルがレフスに向かってきているからだ。

「……言ったでしょ?どんな状況にも対応できるようにした、って!」

レフスはとっさに身動きできず――― 右腕部にミサイルが命中する!

『……!!』

レフスは爆発の衝撃で少しよろける。

『レフス、右腕パーツダメージ40%』

メダロッチの音声のあと、リズがつぶやく。

「ふぅん……ナルホドねェ…… 今度は『はんしゃ』ってワケ?」

「そうよ、アンタがさっき放ったミサイルをタイムアタックで撃ち落とせなかったから……

 切り替えたの。反射パーツに、ね」

リズは髪の毛の先をクルクルと指先で巻くと、

「大体、分かってきたワケ。左右で2つの球が増えていて、メインウェポンは変わってない……

 もう、ネタ切れでしょ?違う?」

「それは……どうかしら?」

「え?どういうコトだ?もうネタ切れって?」

理解できないカイトがまたも疑問を抱く。

オメガはやれやれと言わんばかりに再び説明する。

『敵は、以前のコルのメインウェポンであるスタティック、タイムアタック、そして転倒を見ている。

大きく以前と変わっているのは装甲もそうだが、特に左右の腕の周りに浮いている球が二つ増えてるコトだ。

コルはさっき左右の腕パーツで「かいふく」「はんしゃ」と別の行動をとった、だから―――』

「そうか!球の数だけしか行動がないってコトか!」

『さすがに分かったか、だが―――……』

オメガの次の言葉がわかるかのように寺原は、

「うん、そんな単純な仕組みなら見切られるからね……

 だから、『引き出し』を用意したのさ」

『「引き出し」……?』

ドラグロイが寺原の遠回しの表現に疑問を抱く。

「だったら、『はんしゃ』ができないような攻撃で仕留めるワケ」

レフスが今度は左腕のカードを右手ではがすと同時にナイフのような形状に変化した。

そのナイフを逆手に持つと同時にコルへ接近する!!

「そうか……!ダイレクト攻撃か!」

そう、「はんしゃ」の弱点はダイレクト攻撃―――

「デストロイ」や「アサッシン」などの攻撃はハネ返せない。

寺原はリズの発言とナイフで急接近する様子を見ておそらく後者と判断したのだった。

『くっ……!』

コルは防御体制をとるが―――……

「ムダなワケ!防御は関係なくクリティカルする攻撃……

 さあ、どうするワケ!?」
 
「どうするって…… こうする、かな?」

「こうするって、なにもしてないじゃ―――……!?」

リズの驚きと同時に、レフスがその場でスリップする。

「転倒……!しまった!」

「今よコル!タイムアタック!!」

『うん!』

コルはタイムアタック攻撃をレフスに向けて放つ!

当然、転倒をしているレフスは防御態勢が取れないハズだが……

「……なーんて、ネ」

なんと、体を横方向に転がしタイムアタック攻撃を避けたのだった。

「ウソ!?体勢が崩れているはずなのに……!」

ミイネは思わず驚く。

「アッハハ!そう何回も引っかかんないワケ!

あと残ってる行動が転倒なのは読めてたから、あえて引っかかったフリをしたワケ!

……さらに!」

レフスは後退しながらコルの頭パーツにカードを貼り付ける!

「ハハッ!もう効果は分かってるでしょ?それで、コレ……ね」

レフスは以前のように頭パーツのモニターで巨大なカードを写しだす。そこに書かれていた文字は―――……

「『行動誘発』……! やっぱり、コレが最初から狙いだったのね……」

「そう!全部武装を出させてトドメに頭パーツを狙い撃ち……

 その方がクツジョク的でしょ?アハハッ!」
 
そう、使用したパーツを爆発させる効果を持つカードをコルの頭パーツに貼り付け、

行動誘発で頭パーツの使用を強制する。つまり―――……
 
「おい!マズイじゃんか!!」

様子を見かねたカイトがガラスの仕切りを両拳で叩いて騒ぎだす。

『落ち着け、カイト。寺原の「引き出し」というコトバが正しいなら、

 オレの予想では―――……』

オメガの言葉と同時に寺原が頷き、

「ああ、大丈夫だよ。きっとね」

「ホントかよお……あー!落ち着かねえ!」

ミイネは軽くため息をつくと、

「ホント、いい性格してるわね…… じゃあ、頭パーツを使うわ」

「アハハッ!意外にスナオなワケ!」

ミイネはメダロッチを操作する。

「コル、……使うね?」

『分かった……!お願い!』

コルの頭パーツの帽子の眼が光る!

「アッハハハ!コレで終わり―――……!?」

しかし、その付近に貼り付けているカードは全く反応しない。

「……!!アンタ、まさか―――……頭パーツまで!?」

「……そ!頭パーツを切り替えたの。『武装変更』にね」

コルの両腕のそばに浮いている4つのうち2つの球の色が変化し、カードも同時に消滅した。

「そうか!引き出しって―――」

カイトが手をポンと叩き納得する様子を見てオメガは、

『そうだ。カンタンにいえば頭パーツにももう一つ行動があったんだ。

 更に左右の腕の行動を変化させる―――『武装変更』という行動がな』

『成程な、「引き出し」と表現したのは武装の切り替え、ができる、というコトか』

ドラグロイも納得する。

「そう、おそらく彼女のメダロットで最もトクイとするのは行動誘発からの爆破だ。

 ミイネ君はそこに目をつけて、武装切り替えを主体とした戦法を考えたんだ」
 
寺原の解説になるほどな、と一同が納得する。

「……フン、まあいいワケ。どっちにしても、アンタの機体の両腕はボロボロ……

 さっさとトドメをさせばいいワケ」
 
さらにリズは発言を続ける。
 
 「アト、なんで回復を一回しか使わない……いえ、使えなかったのかも当ててあげよっか?」

「……やっぱ、バレてる?」

「スルドイな……見落とすハズはない、か」

寺原の言葉に感づいたオメガが続ける。

『やはりな……いくら武装を切り替えれるとはいえ、

 無尽蔵に特定の様々なパーツが使えてはパーツを交換しつつ戦えるようなもの……
 
 違法改造でもしない限りは不可能だからな』

リズは髪の先をクルクルさせ、

「球の色からして…… メインとサブの武装がくっきり分かれてるのは気がついたワケ。

アトはさっき言った通り…… 両腕に深いダメージを受けているのにナゼか回復しない……

ソコでサブの武装は一回しか使えないってコトが確信になったワケ、違う?」
 
ミイネはため息をつくと、

「……悔しいケド、アンタやっぱアタマいいわね……よくそこまでタネアカシしてくれるもんだわ」

「お褒めにあずかり光栄だワ。さて―――」

レフス両腕の手のひらをコルに向ける。

「そろそろ、終わりにするワケ!メダフォース、『せいめいドレイン』!!」

コルがうつぶせ気味に倒れこみ、装甲が徐々に壊れていく!

『レフス、右腕パーツ装甲回復。95%……左腕パーツ装甲回復。90%』

それに反し、レフスの装甲のキズが回復していく。

『くうっ……!』

コルは苦しそうになんとか立ち上がろうとする。

「……!まだ間に合う!」

ミイネはとっさにメダロッチを操作する!

『……!了解!ミイネちゃん!』

「アハハッ!いまさら何をしようとムダなワケ!」

『コル、脚部パーツダメージ90%……100%機能停止。

左腕パーツ、ダメージ90%……95%』

ダメージを告げるメダロッチの音声が突然停止する。

「……?なんで左腕が破壊されない…… まさか!」

そう、コルの両腕に浮かぶ球の色が変わっていた。

「間に合ったわね…… 『フォースせいぎょ』を発動したのよ」

フォース制御は敵、味方のメダフォースを封じる行動だ。

これにより、途中で『せいめいドレイン』でのダメージが停止した。

コルは体勢を立て直す。

「フン、しぶといワケ!でももう虫の息!時間の問題なワケ。レフス!」

レフスは右腕をコルの左腕へと向け、光線を発射する!!

脚部がこわれたコトにより、運動性能が落ちているコルはかわし切るコトができず……

まともに左腕に攻撃を受けてしまった。

『コル、左腕パーツダメージ5%。機能停止』

『うっ……!!』

左腕を右手で抑え、コルは後ずさりする。

「……まだよ!コル、右腕を!」

『―――わかった!』

コルの右腕の発動とともに、脚部パーツが『ふっかつ』する!

「それで当分耐えようってワケ?そんなの―――」

レフスは左手を構え、アサッシンを仕掛ける!!

「許すと思ってるワケ?」

レフスはコルが回避行動を起こす前に、コルの右腕を切り裂く!

『コル、右腕パーツダメージ95%。機能停止』

コルの両腕が機能停止した状態となってしまった。

「これでもう復活できない…… 脚部もスグに壊せる……

対してアタシのメダロットはほぼ無傷……もはや勝負はついたワケ」

リズが勝ち誇る。

「まだよ……!頭パーツの装甲がゼロにならない限り……まだ負けたワケじゃない!」

ミイネはまだあきらめていないが、その様子を見かねてかカイトは、

「今度こそヤバイだろ!オメガ、このカベを壊すぞ!!」

オメガは首を横に振る。

『まだ勝負は決まっていない!それに―――ミイネが言っただろ!』

慌てるカイトをオメガが制す。

「でもよ!」

ミイネはカイトの方を向くと、

「そうよ、言ったでしょ?必ず勝って見せるって!信じて!」

「―――くっそ、わかったよ……」

カイトはガラスのカベに押し当てていた握りこぶしを下す。

「この状況でよくそんな大ボラがふけるワケ。もうアタシが勝つのは時間の問題だっていうのにネ」

リズはレフスに右腕のカードを張り替えさせる。すると、右腕が大砲のような形状となった。

「貫通能力があるレーザーに変化させたワ。これを食らえば一撃でしょうネ」

(イチかバチか……!もう、コレにかけるしかない!!)

ブツブツとつぶやくミイネをよそに、

「ゴキブリなみにガンバったケド、今度こそ終わりネ!行け!!」

リズはレフスに攻撃を命じる!

レーザーは一直線にコルめがけて発射され―――命中した!!

命中した地点から煙があたりに広がる―――!

『コル、脚部パーツダメージ10%、機能停止。

頭パーツ……』

メダロッチがダメージを告げていく。

「……まだよ……まだ!」

『ダメージ95%』

煙から機能停止寸前のコルの姿が現れる!!

「何!?」

さらに、メダロッチの音声は続く!

『フォース制御ガ解除サレマシタ…… メダフォースガ使用デキマス』

それを待っていたといわんばかりにミイネは、

「……よし!ここしかないわ!

メダフォース!!『ダメージだま』!!」

『い……っけえ!』

「しまっ……!」

『ダメージだま』は自分がダメージを受ければ受けるほど威力を増すメダフォース!

防御の体勢を整えられないまま、『ダメージだま』がレフスに命中する!!

『ギ……!!』

まともに受けたレフスの装甲が次々と破壊される!!

『レフス、脚部パーツダメージ100%、機能停止。

右腕パーツダメージ95%。機能停止。頭パーツダメージ……92%』

メダロッチの音声が終わる。

非常なコトに、ほぼ最大限のダメージでもレフスの完全破壊には至らなかった。

コルはその場に膝から崩れ落ちる。

「やっぱり……回復した分がネックだったわね……」

悔しがるミイネに対し、リズは思わずツバを飲み込むと、

「ア、アハハ!ビックリさせるワケ!まあ、イタチの最後っぺにしてはガンバったワケ」

リズはレフスに体勢を立て直させ、左腕の攻撃を命じる!

「もう何も出来ないワケ!これで終わり―――!?」

リズは思わず言葉を止める。

レフスがコルの目の前でスリップしているからだ。

「まあ、カンケーないか…… 『これで終わり』だからね」

足を取られたレフスはそのまま頭部を地面へと叩き付けられ―――……

『レフス、頭パーツダメージ8%。機能停止。機能停止。

勝者、篠原ミイネ』

メダロッチが、勝者の名前を告げたのだった。

  

   

Act28・・・完

 

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