Act26 「僧正」

 

アムグス本体の復活を阻止するため内部へ侵入したカイト達を待っていたのは、

ブランク社幹部―――ゼンジだった。

ジャマをするかに思われたが、ゼンジはギンザと一対一の決着のみを望み、

ギンザはそれに答え、カイト達に先に進むように促す。

ロボトルの中、ヴルムは「アルファスタッグ・レグルス」へとパワーアップを果たし、

ゼンジの操るメダロット二体を圧倒するのだが―――!?




「ギンザよ、俺のとっておき……見せてやろう!」

ゼンジは数珠型のメダロッチにあるボタンを操作する。すると―――

ガンジャクの一部のパーツが宙に浮き、ガンジャクはゼンジのメダロッチに転送された。

「……!? 一体が消えた!?」

ギンザの驚きをよそに、レイジャクの周りに浮いたパーツが集まり―――……

一部が合体、周りに浮遊するのだった。

壊れたパーツも再生している。

「待たせたな……これぞ合体形態―――大僧正型『レイガンジャク』だ。

 ……第二ラウンドといこうか」

「……ヘッ、何かと思いきや、一体に減って助かったぜ!

 ヴルム、いっちょかましてやれ!!」

『了解!』

その言葉とともに、ヴルムの姿が猛スピードとともに消える。

一方、レイガンジャクは微動だにしない。

「なんだよ……余裕だな、オッサン!そんなんで俺たちの攻撃が―――」

「……見ていれば分かる」

ゼンジがギンザの言葉を途中で遮る。

そして、ヴルムが右方向から右腕のソードを突き立てようとしたその時―――!

レイガンジャクの脚部に浮いていたガンジャクのキャタピラの前掛け部分が移動し、

ヴルムの右腕を弾いた!

『あっしの刃が通らねェ……!?』

ヴルムは思わず驚く。

「なんだと!? くそっ……ヴルム!今度はこの方向だ!」

『……へい!』

ギンザの指示とともに、ヴルムの姿が再び消える。

「フッ…… ムダなコトを」

ゼンジの余裕もあってか、レイガンジャクは相変わらず微動だにしない。

そしてヴルムが今度は真上から現れ、左腕のアンカーを射出する!しかし―――

肩に浮いたガンジャクの頭パーツだった傘が今度はアンカーを弾く!

「!? これもかよ!? ……まだだ!ヴルム!!」

『合点!』

ヴルムは弾かれたアンカーをしならせ、レイガンジャクの足元に突き立てる!

そのままアンカーのワイヤーを巻き取り、レイガンジャクに近づく!

『うおおおおっ!!』

スピードに乗った状態から右腕のソードを突き立てる!!

「甘いな……傘と前掛けで既にガードしたからといって―――

 本体がガラ空きというわけではない!」

レイガンジャクはガンジャクのパーツであった数珠が浮いた左腕をかざす。

「……! ヴルム!まずい!!」

ギンザの言葉より一瞬早く、レイガンジャクの掌から衝撃波が放たれる!!

アンカーが地面から離れ、ヴルムは吹っ飛ばされ―――フィールドの壁に激突する!

『ぐはっ……!!』

『ヴルム、右腕パーツダメージ80%。パーツ効果ニヨリ一定時間使用デキマセン』

メダロッチの音声が鳴り響く。

「くそ、やっぱか……カウンター攻撃……!!」

そう、以前見せつけられたレイジャクのカウンター攻撃! 

もしやと思いヴルムに回避を命じたギンザだったが―――……

「流石に素早いな、破壊したと思ったが……受ける寸前で衝撃をそらしたか。

 ―――察しの通りだ、このレイガンジャクは二体の性能を引き継いでいる。つまり―――」

レイガンジャクは右腕の錫杖を構え、ヴルムめがけて突進する!

ヴルムは左方向に身をひるがえし避けるが――― 切っ先が左腕をかすめてしまう!

『ヴルム、左腕パーツダメージ40%。パーツ効果ニヨリヴルムノ行動スピード減少……

 レイガンジャクノ行動速度ガ上昇シマス』

「げっ、チャージドレイン……!これもかよ……」

「そうだ。つまり―――実質2体1という状況は変わらないワケだ。

 コレで終わりなら…… 俺の見当違いというところだが」

ギンザは一瞬うつむくが、すぐに口元をニヤつかせ―――

「何言ってんだ!まだまだこっからだっての!」

『……親分!準備万端です!』

ヴルムはそう言うと同時に前傾姿勢を取る。

「フッ、チャージドレインによりもはや持ち味の速さは失われている……

 後はレイガンジャクの攻撃を受けるのみだというのに」

「関係ねーな!遅くなったんなら―――

 さらに加速してやればいいだけだ!行くぜ!」

ギンザはメダロッチを操作する。

『メダフォース「すいしんアップ」発動…… ヴルムノ移動速度ガ上昇シマス』

「なるほどな、メダフォースか……だが、速度はレイガンジャクがまだ上だ!」

レイガンジャクの錫杖がヴルムに突き立てられるその瞬間―――!

「……今だ!メダフォース、『きどうアップ』!!」

錫杖が直撃寸前で空を切り、ヴルムの姿が消える!

「……何!?連続でだと!?」

『ウオオオオオオオッ!!』

ヴルムの左腕から速度が増したアンカーが射出される!

レイガンジャクは浮いている前掛けと傘でガードを行おうとするが、

アンカーの速度が勝り、弾かれ―――レイガンジャクの右腕に突き刺さり、

アンカーを巻き取りつつヴルムが高速で接近し、レイガンジャクを蹴っ飛ばす!

『……!!!』

『手ごたえありィ!!』

レイガンジャクは後方に吹っ飛ばされ、右腕をおさえる。

『レイガンジャク、右腕パーツダメージ15%』

「やるな、だが―――」

「軽い、って言いたいんだろ?それなら!」

ヴルムの姿が再び消える―――!

「何回も、攻撃するまでだぜ!!」

アンカーが再び射出される!

レイガンジャクは再び傘と前掛けをガードに向かわせるも、アンカーに弾かれてしまう!

「防げんのなら――― 手繰りよせろ!レイガンジャク!!」

レイガンジャクはアンカーを当たる寸前でかわし、ワイヤー部分を左手で掴んで止めた!

「げっ!?ウソだろ!?」

そのままワイヤーをひっぱり、右手の錫杖を突く体勢で構える!

「終わりだ!!」

錫杖が迫るその時―――!

『パーツ使用不可能効果回復…… 右腕パーツ使用デキマス』

メダロッチから、右腕の使用不可効果がなくなったコトが知らされる!

「……しめた!ヴルム!そのまま全開で巻き取って加速しろ!!」

『了解でさァ!!』

「何だと!?」

ヴルムの体があまりものスピードでくの字に逸れつつも、レイガンジャクへと向かってゆく!

「くっ、レイガンジャク!カウンター……」

「遅えよ!!」

そのままヴルムは右腕のソードを突き出し、レイガンジャクの左腕を貫く!

『―――!!』

『レイガンジャク、左腕パーツダメージ100%。機能停止』

ヴルムが駆け抜けざまに着地すると同時に、レイガンジャクの左腕の装甲がはじけ飛ぶ。

「うっし!これでカウンターは使えないぜ!」

ギンザが思わずガッツポーズをする。

それに対し、ゼンジは―――……

「……やはりお前との戦いは面白い……!

まさか手繰り寄せたスピードと自身の巻き取る速度を掛け合わせるとはな……!」

「流石にダメかと思ったケドな……!

 あそこで使用禁止が解除されてなかったらと思うとゾッとするぜ……!

……こんなときに不謹慎かもしんねぇケド、やっぱオッサンとのロボトルは楽しいわ!」

「フッ、俺もだ―――…… だが―――」

「ああ、終わりに……しようぜ!」

ヴルム、レイガンジャクが互いに静かに構えを取る。

そして、先にヴルムが姿を消したその瞬間―――!

「今だ、レイガンジャク!頭パーツだ!!」

「何!?」

ギンザの驚きとともに、レイガンジャクの頭パーツが効力を発揮する!

『「パラメータリセット」ハツドウ……

 全テノメダロットノパラメータガリセットサレマス……』

ゼンジのメダロッチの音声とともに、ヴルムの速度が減少していく……!

『親分……!体に力が入りやせん……!』

ヴルムは攻撃態勢でレイガンジャクに向かってはいるが、もはやスピードがない!

「リセット……だって……!?」

「そうだ……この頭パーツは一回しか使えない、しかし……

 パラメータの上昇効果などを全ての敵メダロットに対し通常に戻すというもの!

 これで……お前のメダロットは捉えたも同然!!」

レイガンジャクの錫杖が迫る―――!!

「今度こそ……終わりだ!!」

チャージドレインの効果が働き速度が減少しているため、

攻撃態勢に入っているヴルムは回避を行うことすらままならない!

レイガンジャクの錫杖がヴルムの左半身を貫く……!!

『ぐあああっ!!』

ヴルムは錫杖に貫かれたまま、うなだれ、カメラアイの光が消える……!

『クリティカル!ヴルム左腕パーツダメージ60%、機能停止。

貫通!脚部パーツダメージ100%。機能停止。貫通!……』

メダロッチがヴルムのダメージを告げていく。

「急所を完全に突いた。もはやこれまでだ!」

ゼンジが勝利を確信するが、ギンザは―――……

「……どうだかな、勝負は最後まで―――」

『……頭パーツ、ダメージ98%』

「―――わかんねぇもんだぜ?」

ヴルムのカメラアイに光が戻り、そのまま左手で錫杖をおさえる!

「バカな!? ……だが、お前が負けるのはもはや時間の問題!

 俺のレイガンジャクをこの一撃で倒せるほどの攻撃力は持ってないはずだ!」

「ああそうさ!速さはあっても攻撃力が足りない!

 そんで、アンタはなんらかの方法でヴルムを捉えると思っていた!だから―――!」

ギンザはメダロッチを操作する!

『メダフォース、『いりょくぜんかい』発動!攻撃力ガ上昇!』

「超至近距離の一撃に全てをかけてたんだ!!」

『ウオオオオオオオオオオオッ!!』

ヴルムは右腕のソードをレイガンジャクの頭部に向け突き立てる!!

「まさかハナからこれが狙いだったのか!?

 くっ、レイガンジャク!傘と前掛けで防げ!!」

レイガンジャクはヴルムの右腕の前に傘と前掛けを挟みガードしようとする!

しかし、ソードには亀裂が走るものの、傘と前掛けをものともせず貫く!!

「バカな!?」

「ぶちかませえええええっ!!」

ついにヴルムのソードがレイガンジャクの頭部に直撃する!

『…………!!!』

レイガンジャクが崩れ落ちるとともに、ヴルムの右腕パーツの亀裂が一気に走って砕け、

その場に二体とも倒れこんでしまう。そして―――

『ヴルム、右腕パーツダメージ20%。機能停止。

 レイガンジャク、頭部パーツダメージ100%。機能停止。

 リーダー機機能停止ニヨリ、勝者、海藤ギンザ』

レイガンジャクの背中からメダルが排出され、メダロッチがギンザの勝利を知らせるのだった。

「やったぜ!ヴルム!!」

ギンザはすぐさまヴルムの元に駆け寄る。

『ヘヘ……やりやしたぜ、親分』

ヴルムは倒れこみながらも右手の親指をグッと立てる。

「おう!お疲れさん!」

ギンザはヴルムをメダロッチに転送する。

「フッ、見事なものだ…… 俺の負けだよ、海藤ギンザ」

ゼンジがレイガンジャクのメダルを拾いつつ言う。

「オッサンもやっぱすげえぜ!

 ……なんでブランク社なんかにいるか分かんねえくらいにな」

ゼンジは少し間を置き、

「……俺も色々あったのさ。

 事実、俺もこの世界はどうなってもかまわないと思っている。だが―――」

そう言うと、ゼンジはなぜか上を見上げる。

「―――もしかしたら、お前達ならボスを止めれるかもな」

「……当たり前だぜ、あのヤローの企みはぜってー阻止してみせる!」

「その意気だ。……早く行って力になってやれ」

「分かってるっての、でもオッサンやっぱイイ奴だよな!」

ギンザはゼンジの横を通り過ぎ、階段の前まで移動する。

「……もし、世界が変わらなかったら――― その時はもう一度戦おう。ギンザ」

「―――ああ!!」

ギンザは階段を駆け上がり、カイト達のいるフロアを目指すのであった―――……。

 

 

ブランク社幹部、ゼンジを撃退したギンザ。

果たしてカイト達はアムグスの完全復活を阻止できるのか!?

 

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