Act.25「恒星」

 

ペイロンの最後の力により要塞の中へ無事進入したカイトたちであったが……

中は外観からは想像できないほどに複雑な迷路と化していた。

何に使うのかが分からないコンピューターや機械が乱雑している。

「なんだこれ……次はどっちに進んだらいいんだ?」

カイトは分岐路を前に思わず左右にクビを振る。

『……こっちだ』

オメガは左を指差し、歩き出す。

「ホントにあってんのか?オメガ」

『分からない、メタルコアの影響だろうか……

 さっきから引かれあっているような、不思議な感覚がする』

カイトの疑問に、オメガはこう答えるも…… 

今はそれを信じるしかないといわんばかりにカイトたちは後に続く。

そして、しばらくすると広い空間に出た。

奥には階段があった。だが―――

「……待っていたぞ」

そこには、ゼンジが待ち構えていたのであった。

「なっ!?」

カイトの反応をよそにゼンジは、

「足止めを命じられているが…… 俺は俺のやりたいようにやる……。

 俺が戦いたいのは海藤ギンザ、お前だけだ。

 他は別にどうだっていい……先に行け」

はっきりとギンザを指名したのだった。

「おい!どうでもいいってなんだよ!!オレだってなぁ……」

「先に行け!カイト!」

カイトの言葉をさえぎり、ギンザが割り込む。

「ギンザ!」

「相変わらず何考えてるか分かんねぇケド……

 このオッサンは、俺と勝負したいようだからな……

 時間がねえ、急げ!」

ギンザはそう言うとメダロッチを構える。

「だけど……!」

「……カイト君、悪いけど、ここはギンザ君を信じて先に進もう」

寺原はカイトの肩を軽くたたき、階段の方へ進む。

「ギンザのコトは確かに心配だけど……

 行くわよ!アンタこそ先に進まないと!」

ミイネも先に行こうと階段の方へと進んでいく。

「くっ……後でぜってぇ追いつけよな!!」

『頼むぞ、ギンザ……』

カイト、オメガが階段へ駆けていく。そして―――

『やるからには、勝つのだぞ』

ドラグロイはすれ違いざまに声をかけた。ギンザは口元をにやつかせ―――……

「おう、まかせとけ!!」

そう返すと、親指を立てるサインをする。

ドラグロイが階段の前に到着するとともに、階段を一行は上っていくのだった。

「待たせたな……やろうぜ、オッサン!」

「……いいだろう、始めるか……メダロット、転送!」

ゼンジのメダロッチから法師型―――レイジャクが転送されてきた。

感情がないのか、相変わらず無言である。

『いつでもいけやすぜ!親分!』

「おう、行くぜ!メダロット、転送!!」

ギンザのメダロッチからヴルムが転送されてくる。

しかし、ボディは以前の―――アルファスタッグ・プロトのままだ。

「何か新型でくるのかと思っていたが……違うとはな」

ゼンジは少しがっかりとした表情を見せる。

「ヘッ、まぁあせんなって!」

「だが……コチラは本気でいくぞ?もう1体、転送だ」

「何っ!?」

ゼンジはもう1体……戦車型の座禅を組んだような一つ目をし、

アタマに笠をつけた重量感のあるメダロットを転送する。

「僧型メダロット―――ガンジャクだ」

『……』

ガンジャクと呼ばれたメダロットは、無言でレイジャクの隣に並ぶ。

「……ハッ、こっちはハナっから1体だ!いくぜ、バトルフィールド展開ッ!!」

ギンザはメダロッチを操作し、バトルフィールドを展開する!

『バトルフィールド展開シマス……今回ノバトルフィールドハ『スタジアム』デス……』

「フッ、スタジアムか…… いい舞台じゃあないか」

「ああ、アンタをぶちかますのにはな!」

バトルフィールドが展開し終わり……

『……ロボトルファイト』

メダロッチの音声が鳴り響く。

「ヴルムッ!あの戦車型にソードだ!」

『合点!』

ギンザはヴルムを開始とともに戦車型……ガンジャクへソード攻撃へ向かわせる!

「……ナルホドな、鈍重な方から狙おうというわけか……だが」

ガンジャクは防御体勢をとり、攻撃を受け止めた。

『ガンジャク、右腕パーツダメージ15%』

「なんだと!?」

『手ごたえはあったんですがねぇ……』

「―――油断は禁物だぞ?」

レイジャクがヴルムの真横まで忍び寄っていた!

錫杖を頭部につきたてようとするが―――!?

「かわせっ!ヴルム!」

『了解でさぁ!』

ヴルムは勢い良く後ろに飛び、攻撃をかわした!

「ほう、やるな……」

「まだだ、そのまま今度はチョンマゲにソードだ!」

ヴルムは後ずさりの終わり際に地面を蹴り―――

『うおおおっ!!』

レイジャクにソード攻撃を仕掛ける!!

『……!!』

レイジャクはまともに斬撃を受けた!

『クリティカル!レイジャク、左腕パーツダメージ84%』

「うおっし!いいぞ、カウンターにさえ気をつければいけるぜ!」

ギンザは思わずガッツポーズをする。

しかしゼンジは―――

「回避と攻撃の切り替えが素早いな……フフ、いいぞ……

 ではそろそろ行こうか…… ガンジャク!」

ガンジャクは左腕に持っている鉢を掲げる、すると―――……

『「チャージドレイン」発動……ヴルムノ行動スピード減少……

 レイジャクノ行動速度ガ上昇シマス……』

「げっ……!」

「さぁ、行くぞ?」

スピードが遅くなったヴルムに、レイジャクの錫杖が襲いかかる!

「かわせっ!ヴルム!!」

ヴルムは右方向へ回避しようとするが―――

『なっ!?

ガンジャクが待ち構え、ヴルムを取り押さえる!

そのままレイジャクの釈杖がヴルムの右腕部に直撃する!

『ぐっ……!!』

ヴルムは右腕をおさえながら衝撃に耐え後ずさりする。

『ヴルム、右腕パーツダメージ100%。機能停止』

メダロッチの音声とともにヴルムの右腕部の装甲が完全に壊れる。

「フッ……このまま一気に―――!?」

ゼンジの表情がヴルムの右腕部をみて一変する。

「なんだ……!?その右腕部は!?」

ヴルムの右腕部は破壊されたのにもかかわらず、なんとカタチを変えて存在していた。

「ちぇ、も少しいけると思ったんだケドな……

 見りゃわかんだろ?新型さ」

ギンザはさも同然のように答える。

「なぜパーツの中からパーツが出てくる……!? ……まさか!?」

「そうさ……いま着けてるプロトの装甲を薄くして、

 新型の装甲を下に仕込んだだけだぜ?」

ゼンジは理解をしたように口元をにやつかせる。

「もともとの装甲値を変えずに、か…… ハッ、とんだ杞憂だったようだ……

 そんな事をして――― 一体何になるというのだ?」

「別に、単に驚かせたかっただけっつったら…… どうする?」

「―――至極残念だ」

ゼンジはレイジャクに攻撃を命じる!

釈杖がヴルムに向け突き出されたその時―――!!

「行くぜ……!ヴルム!!」

『合点!!』

その言葉とともに、ヴルムの姿が消え―――釈杖は空を切った。

「……何!?」

すると、急に装甲の破片らしきものが上空から落ちてきた。

「―――上か!!」

上空には脚部の装甲をボロボロと落としつつも、飛び上っているヴルムの姿があった。

脚部パーツの形状が変化している。

「わざわざ飛び上るとは…… 何を考えている!?」

「っしゃあ、ぶちかませぇ!!」

ヴルムは左腕のトンファーをレイジャクに向ける!

すると、中から何かが飛び出し――― 

ワイヤーがついた碇の様な形状のモノがレイジャクの左腕部へと突き刺さる!

そのままレイジャクをヴルムはワイヤーを巻き取り、無理矢理引き寄せる!

『……!!?』

『ウオオオオオッ!!』

ヴルムは叫び声とともに右腕のソードでレイジャクに斬撃を叩きこむ!!

『ガ…!!』

レイジャクは地面にそのまま叩きつけられる!!

『レイジャク、左腕パーツダメージ100%、機能停止。脚部パーツダメージ70%』

「な、なんだあの動きは……!?」

「まだだぁ!もう一体にも行くぜ!!」

ヴルムの姿がまた消える―――!

「何だと!? クッ……!」

ゼンジは耳を澄ませ、襲ってくる方向を見極めようとする。

地面が蹴られる音を聞いたその時―――!

「―――左だ!」

ガンジャクは左を向きカウンターの体勢に移行するが―――

「右だっつの、オッサン!」

「なっ!?」

ヴルムは右側から姿を現し―――左腕のアンカーをガンジャクの右腕部につき刺す!

『オオオオオッ!!』

そのまま引き寄せる勢いを利用し、右腕のソードを突き立てる!!

『――――!!』

ガンジャクは吹っ飛ばされ、バトルフィールドに叩きつけられる!

『ガンジャク、右腕パーツダメージ85%。機能停止。

 頭パーツダメージ30%』

また、その衝撃とともにヴルムの頭パーツの装甲が完全にはがれ落ち、

新型のパーツが姿を現すのだった。

「……やってくれる!こいつが、お前の新型か……!」

ゼンジは驚きを隠せないまま問いかける。

「ああ、α星にちなんで―――『アルファスタッグ・レグルス』らしいぜ」

「いい名だ……『恒星』か……」

ゼンジがそういうと同時に、レイジャクとガンジャクが体を起こす。

「さあオッサン、アンタもまだ出しきっちゃいねえだろ?

 ホンキでやろうぜ?」

「お見通しというワケか…… 

 いいだろう……俺のとっておきを見せてやるぞ、海藤ギンザ!」

 

 

ゼンジと一騎打ちをすることになったギンザ。

ゼンジの『とっておき』とは―――!?

 

Act25・・・完

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