Act.24「再動」

 

新型の調整も終わり、いよいよブランク社との決戦の日を迎えたカイトたち。

カイト、オメガ、ギンザ、ヴルム、ミイネ、コル、寺原、ドラグロイ……

それぞれの思いを胸に、その場所へ集合していた。

その場所は以前、研究所前で機動要塞兵器―――『アムグス』が出現した地点であった。

かつてカイトたちを保護し、アムグスを眠りに付かせた光輝くメダロット―――ペイロンが問いかける。

―――準備は、よろしいですか?

「ああ、大丈夫だぜ!しこたまうどん食ったし」

カイトはにやっとしてお腹をさすっている。

「ホント、アンタは緊張感ないわねー…… あたしも甘いものたくさん食べたけど」

「お前らなぁ…… まぁ俺も上手いもん食っといたケドな」

ミイネ、ギンザの返しとそれぞれの様子を見かねてオメガは、

『―――やはり3バカだな……』

「「「ちがう!!!」」」

見事なハーモナイズが響き渡る。

「ははっ、その様子だと……もうカクゴは決まってるみたいだけど、大丈夫かい?」

寺原は少し笑いながら聞く。

「モチロンです、オレは皆を守るって決めましたから!」

カイトはメダロッチを掲げて言う。

「ハイ!俺たちしか出来ないならやるしかないっす!」

『あっしも頑張りますぜ!』

「あの幹部とのロボトルがなかったらうわついてたかもしれないケド……

   もうカクゴ決めました!」

『わたしも大丈夫です!』

ギンザとヴルム、ミイネとコルも迷いがない様子である。

二人のメダロットはメダロッチの中のようだ。

「新型かぁ〜どんなんか楽しみだぜ」

カイトは二人の新型をまだ見ていない。完成が本当にギリギリであったためだ。

「へへっ、スッゲェのになっちまったぜ」

「あたしのもねー」

「僕の自信作だ、きっとオメガ君にヒケをとらないはずだよ」

寺原は自信ありげに話す。

ドラグロイは手にしている剣を地面に突き刺し、

『拙者もカクゴは以前から決まっている…… モンダイ無い』

「レイン……さん、は…… いないか、やっぱ」

カイトは辺りを少し見回し、残念そうにつぶやく。

「彼女は……きっと、パートナーと上手くやっているよ。信じよう」

寺原はなだめるように言う。

「だよな……」

『それで、ペイロン……オレ達はどうすればいいんだ?』

オメガが改まった様子で聞く。

―――今、アムグスが姿を見せます

そうペイロンが言うと、何もない上空からゆっくりと……アムグスが姿を見せてゆく。

円柱型の巨大なソレは、独特の不気味さが漂っていた。

しかし、それはまだ動き出す様子はなかった。

―――まだ停止させています 程なくあの男が現れると動き出すと思われます

「あの男……か」

寺原は苦い顔をして言う。

「寺原さん…… ん?何だ?」

カイトはふとやってきた道の反対側を見た。すると―――

ブランク社の幹部がぞろぞろと歩いてきた。

「よォ、久しぶりだな、ボウズ!」

髪の癖が強く、一部を金色に染めていることが特徴的な男……

カイトが半年前研究所内で戦った―――ダヴが言う。しかし……

「お前は……確か、ダムだな!」

「あァ!?ちげェよ!ダヴだ!」

と、カイトに名前を間違えられるのであった。

「あれっ、そうだっけ?」

「テメェ……」

そんなダヴを気にも留めずに前に出て来たのは、

左右の長さが微妙に違う、ピンクの髪が特徴的な女―――

「アレからマシになったワケ?ケーキのミイネちゃん」

ケーキ屋の前でロボトルを繰り広げた、リズだった。

「アンタこそ、今度は本気で戦ってよね」

そう、リズはパーツの能力すべてを明らかにしていない……

「フフ、泣いても知らないワケ」

次に姿をあらわしたのは、銀がかった短髪に糸目が特徴的な男……

「……海藤ギンザ、今日は楽しませてくれよ?」

法師型のメダロットを使い、ギンザとロボトルを繰り広げた、ゼンジと名乗った男だった。

「ああ!きっと楽しめると思うぜ、オッサン!」

ゼンジも以前のロボトルで全部を出し切ったわけではなく、実力は計り知れない。

ゼンジはオッサンではないぞと軽く鼻で笑うようなそぶりを見せた。

そして―――……

「おそろいだね、諸君」

ゆっくりと後ろから、この場にいる誰よりも年を重ね―――威厳に満ち溢れた男が歩いてきた。

そう、アムグスを意のままに操り、セカイを作りかえようとする男―――……

「ラスワール……」

寺原が息を呑んでその名を言う。

「フム……寺原か……」

そういうとラスワールは寺原の前まで歩み寄ってきた。

「キミはなんだかんだで優秀であった…… どうだ?再び私の元へと来ないか?」

「なっ!?」

寺原より先にカイトがリアクションをとってしまう。

「―――断る!!」

ラスワールはマユをピクリと動かす。

「ほう……即答だな、それは空斗が―――」

ラスワールが言い切る前に寺原が割り込む。

「確かにそれもある…… セカイを作りかえるなんて馬鹿げている…… 

 だが、もうそれだけじゃない…… あんな兵器を動かす手伝いをしてしまった…… 

 僕自身が許せないんだ……!だから僕は……僕達は、オマエを止める!」

「「「そうだそうだ!」」」

3バカ―――……もとい、カイト、ギンザ、ミイネも叫ぶ。

ブランク社一向は苦笑いであった。

そんな様子をものともせずにラスワールは、

「フン……最後の譲歩を足蹴にするとはな…… いいだろう、やってみるがいい」

そう言って、カイトたちと幹部の戦いを元に作り上げた擬似メタルコアを掲げると、

それはアムグスへと吸い寄せられ、取り込まれた。

そしてアムグスは振動をはじめ、動き出そうとする―――

その振動は地面にも伝わるほどであった……!

「うわっ、振動がこっちまで!?」

「なんて地響きなの……!」

「ここまでとは……!」

ギンザとミイネはうろたえた様子でなんとか地面に足をつけている。

寺原もなんとか堪えているが……。

『ぐ……!』

ドラグロイは持っている剣を地面に突き刺し、持ちこたえている。

「やーっとはじまったワケ……」

リズはその様子を見て笑いを浮かべる。

ペイロンは両手を突き出し、アムグスの動きを静止しようとする。

しかし、アムグスの振動は収まるようすはない。

「はっはっはっは!ペイロンよ、まだ耐えられるか!?」

『ぐ……ペイロン!』

オメガが心配そうに声をあげる。

―――殻は制御できているのですが 中の本体がもう覚醒しています

「じゃあどうすればいいんだ!?」

カイトが振動に耐えつつも声をあげる。

―――メタルコアで相殺できるチカラなら あるいは―――

『出番、というわけか……!カイト!!』

オメガは胸の赤いハッチを空けると、メタルコアを取り出す。

「りょーかい!待ってたぜ!受け取れ!」

カイトはポッケからカギ―――リヴィアを取り出し、オメガに向けて投げる。

『よし……!行くぞ!』

オメガはリヴィアをメタルコアに差し込むと、メタルコアは緑色に激しく発光する―――!!

『この光は……!?』

すると、アムグスの振動が収まり―――……アムグスは静かに地に着いた……

それと同時に、メタルコアの光も収まった。

「何!?」

ラスワールは流石に驚きを隠せなかった。

「これが……リヴィアの―――父さんがくれた力なのか……?」

カイトは思わず目を見開き驚いていた。しかし―――……

メタルコアから飛び出してきたリヴィアには、ヒビが入っていた。

『何だ……これは ヒビが……?』

―――空斗はおそらく このことを…… 予見……していたのかも……しれませ……ん

ペイロンの輝きが鈍り、声が途切れ途切れになってゆく。

ペイロンは力尽きたようにゆっくりと地面に倒れてしまった。

『―――ペイロン!!』

オメガ達はペイロンの元へと駆け寄る。

「クソ…… 空斗め…… どこまでもジャマをしてくれる……!!」

「で、どおすンだよ、ボス」

黙っていたダヴがラスワールに問いかける。

「ならば……要塞の最深部へ直接足を運ぶまでのことだ」

そう言うと、ラスワールはアムグスへ近づいてゆく。

チッ、と舌打ちするとダヴも後へ続く。

「あーあーやっぱそうなるワケ?めんどくさっ」

リズはため息をつき、後に続く。

「…………」

ゼンジは無言でリズの後に続いていった。

「ま、待て!」

カイトがそう言ったと同時に、アムグスに扉が出現し―――

ラスワールたちは要塞の中へと消えていき、扉も閉ざされたのだった。

―――私……の セイで…… モウシ……わけ …ありま…セン

ペイロンの声がさらに聞こえにくくなっていき、

輝きも薄れ、透明になってゆく……。

『ムリもないか……半年間ずっとアムグスを押さえていたんだ、

 チカラを使い果たしてもう限界だったんだろう……』

「消えていく……!どうすりゃいいんだよ……」

オメガ、カイトが嘆く中―――……

―――ワタシ……の 最後のチカラ……ヲ 使い…… アムグスへノ扉を……再び 開きマス

「駄目だ!そんなことをしたら 君は……!」

寺原は反対する。もちろん―――

「何いってんのよ!もうアンタ消えかけじゃない!」

「そうだぜ!ムリすんじゃねぇよ!」

ミイネ、ギンザも反対する。しかし―――……

『しかし、今ペイロンのチカラなしでは……拙者達は要塞に侵入すら出来ん』

ドラグロイは冷静に切り捨てる。

「やってみなきゃわかんねぇだろ!?」

カイトはドラグロイの肩を引っつかむ。

『……半年前は、あの装甲は出力最大のメダフォースでも砲台越しにしかダメージがいかなかったのだぞ!?

 こうしてる間にも、奴らは―――!!』

「リヴィアがあるじゃねぇか!!」

『今使ったら本体に出会ったときにどうする!?もうヒビが入っているのだぞ!?

 ココで立ち止まってどうする!?』

「く……!」

カイトはそれ以上言い返せなかった……。

ギンザ、ミイネも反論ができなかった。

―――ダイジョ……ウブ です きっと……我々……は マ……タ 会えま……ス

ペイロンは手をアムグスの方へと向け、扉を出現させた。

『済まない……』

オメガが詫びの言葉をこぼす。

―――空斗ニ…… ヨロしく…… おネがイ…… しま……す

ペイロンは静かに消えていった……

カイトはその場で崩れ落ち……そして……

「ペイロオオオオオオオオオオオオオオン!!」

 叫び声が辺りにこだました―――……

 

 

「……行こうぜ、カイト」

ギンザが手をカイトへ差し伸べる。

「悔しいケド、ドラグロイの言うとおりだわ……ココで立ち止まったら、それこそ終わっちまう。

 頑張ってくれたペイロンの分まで、ぶちかまそうぜ」

「そうよ、確かに悲しいけど……ココで止まっちゃったら、もっと悲しい思いするもんね!

 行きましょう、カイト」

ミイネも手を差し伸べる。

「ギンザ……ミイネ……」

『……行くぞ、カイト』

オメガも手を差し出す。

『オレ達で、ラスワールを止めるんだ』

「オメガ……」

カイトは、ウデで目元を拭い……3人の手すべてを両手で包むようにして取り、立ち上がる!

「……そっか、そうだな、オレが……イヤ、オレ達で頑張らなきゃいけないんだ!!

 セカイなんて作り変えさせてたまるか!!うおおっ!!」

そう叫ぶと、扉の前にはやばやと足を運んだのだった。

「それでこそバカイトだぜ」

「全く、スグ調子に乗るんだから」

ギンザとミイネも扉へと向かう。

『北条カイト……やはり面白いヤツだ』

『フッ……全くだな』

ドラグロイ、オメガも扉の前へと立つ。そして……

(空斗さん……カイト君は、立派に成長しましたよ―――)

扉の前に立った寺原は感慨深く思いふけったのだった。

「よし、行こう!皆!!」

カイト達は扉を開き、要塞の中へと入って行った―――……

 

 

 

 

機動要塞兵器アムグスの中で、ついに決戦が始まる―――!!

カイト達の運命は―――!? 

 

 

Act24・・・完

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