メダロットA第二十三話

Act.23「鍵」

 

ついにアムグスの再起動まで残り一週間となった。

カイト達は決戦の協力者を求めていたが、

誰に話しても何を言っているんだというような回答しか返ってこず……

結局のところ、協力者は中々見つからなかった……

「やってらんねぇよ、ギンザも言ってたけど……みんな記憶がおかしくなっちまってる…… 

 少しはコッチの言うこと聞いてくれてもいいのになぁ」

カイトがぼそりとこぼす。それを聞きオメガは、

『そう言うな。一人でも見つかればチカラになるはずだ』

「でもなぁ……ん?」

そんな中、ふと前方に人……いや物影が見えた。

そう、どこかで見たことのあるメダロットの影―――。

『……久しぶりだな、北条カイト』

水色の身体に赤いマント、そして手に持った剣―――……

『お前は……!』

「……ドラグロイ!」

そう。かつて対峙し、その後のダヴとのロボトルでは力となった竜騎士型メダロット、ドラグロイだった。

「今までどこに行ってたんだよ?っていうか、お前ペイロンの結界の中にはいなかったよな?」

『ああ、拙者はペイロンに「依頼」を頼まれたのだ。お主らが目覚める少し前にな』

『「依頼」、だと?』

オメガが思わずつぶやく。

『うむ。今から話そうと思うのだが…… 寺原殿にも聞いてもらった方がいいだろう』

 

 

〜数分後、メダロット研究所〜

「こんにちわ!」

カイトが寺原の研究室のドアを開けるとともに挨拶をする。

「ああ、カイト君か。ちょうどいい、二人も来ているよ」

奥にギンザ、ミイネの姿が見えた。

「ヴルム、ソードだ!」

「コル、右腕!」

『合点!』

『うん!』

二人はロボトルを行っている。

「おっす、特訓か?」

カイトがひらひらと手を振り、二人に声をかける。

「おお、新型の開発のために寺原さんにデータとってもらってんだよ」

「後一週間だから、ギリギリっぽい感じはするケドね……」

そして、二人のメダロットの行動が終わり一泊つくのを見かねると、

「ちょうどいい、休憩しようぜ」

ギンザの提案にコル、ヴルムは首を縦に振った。

ミイネもさんせーと返事し二人はそれぞれのメダロットをメダロッチに戻す。

そして、寺原は改まった様子で聞く。

「ところで、カイト君…… 協力者は見つかったかい?」

「いや、やっぱりペイロンに保護されたオレたち以外は記憶がおかしくて……

 コッチの言うことを聞いてくれないんだ」

「そうか……やはり僕たちだけで決戦に赴くことになるのだろうね」

「ケド…… 頼もしい仲間なら見つかったぜ!おーい、入ってこいよ」

『……失礼する』

ドアを開けてドラグロイが入室した。

その姿を見て三人の視線がドアの方に一気に向けられた。

「君は、ドラグロイ君か!結界にいなかったのでどこに行ってしまったのかと思ったよ」

「おお、お前か!無事だったんだな」

「アンタ、今までどこ行ってたのよ!」

そして、一斉に言葉を浴びせられる。

『う、うむ。先にペイロンに保護されていたのでな…… その時のことを話そうと思うのだが』

「ああ、ぜひ聞かせてくれ」

ギンザたちも、ロボトルを中断しドラグロイの声に耳を傾ける。

ドラグロイはゆっくりと語り始めた―――……

 

 

 

『う…… ここは?』

拙者はペイロンの結界で気がついた……拙者のほかには誰もいなかった。

―――目が覚めましたか

『お主は……?』

―――私はペイロン この結界を作り出したものです

光り輝いていて外見はほとんど分からなかったが、神々しいものを感じた。

拙者はペイロンに事情を聞き、あらかたは把握した。

その後の会話は……かいつまんで話そう。

『そうか、お主があの歌を―――…… 拙者はなぜ眠らされたのだ?』

―――あなたをアムグスから守るためです 三ヶ月ほど力を抑えつけていますがまだ機能を停止していません

『三ヶ月だと!?外はどうなっているんだ? カイト達は無事なのか!?』

―――攻撃的な機能は停止していますので町は無事です 代わりに他の人々の記憶が操作されアムグスを認識できない状態となっています

   北条カイトたち4人は保護済みです あと目が覚めるまで三ヶ月ほどかかりそうではありますが……

『そうか、良かった…… それで、アムグスは拙者達以外は名前はおろか姿を認識すらできないというわけか……』

―――はい あの場にいたあなた方にしか…… 

   そして、どうやら現在はアムグスは世界中からメダルを吸い寄せているようです

『メダルを?何のためにだ?』

―――分かりませんが、考えられるのは……我々の協力者をなくすことと―――……

『大量のメダルを用いた、「兵器」か……』

―――そこで、早く目覚めてもらったあなたに頼みがあります

『依頼?何をすればよいのだ?』

―――これからある場所に向かっていただき、あるモノを探していただきたいのです

『何なんだ?それは?』

―――メタルコアの力を最大まで増幅する力をもつカギ……『リヴィア』というモノです

『「リヴィア」……?』

―――かつて私とアムグスが対峙した際に私は『リヴィア』を用いて封印を施しました

   そして現在はおそらく……彼が所持しているはずです

『なるほど、かなり重要なものなのだな…… して、彼とは誰だ?』

―――『北条 空斗』…… 北条カイトの父親です

『カイトの……? ではなぜカイトではなく拙者に依頼する?』

―――彼にはもう少し眠っていただかなければなりません 

   空斗は特殊な場所にいます メダロットの方が都合がよいでしょう……

『特殊な場所……』

―――これからあなたをそこに近い場所に飛ばします 詳しくは断定できませんでしたが……

   必ずそこにいるはずです

『成程な、だから拙者だけが早く目覚めたわけだ』

―――お願い、できますか?

『……断るわけがなかろう。拙者は一度カイトに救われている。少しは役に立たねばな』

―――ありがとうございます…… では、転移します お気をつけて……

 

 

こうして拙者はとある広大な辺境へ飛ばされた。

そこはとても厳しい寒さで、厚着をしていなければ凍死しかねないほどだった。

「メダロットの方が都合がよい?近い場所? ……良く言ったものだな」

流石は探検家といったところだろうか、こんな環境でも人は探索をすることができるのかと感心してしまった。

捜索して3ヶ月で、ようやく見つかった。

『……ようやく、見つけたぞ』

誰だ?こんな辺境まで何の用だ?と空斗はあっけらかんな返事をするので拙者は事情を説明した。

「……そうか、もう始まっていたのか。アムグスの所為で全く気付けなかった」

『やはりお主も記憶をいじられていたのか』

「ああ、だが……ペイロンとお前のおかげで気づけたよ。

 そんで、お前の目的はこれだろ? ……これが「リヴィア」だ」

そう空斗は言って拙者に小さなカギの金属物「リヴィア」を渡した。

『まさしく「鍵」だな……』

「……カイトを頼んだぞ」

そう言うとその場をすぐに去ろうとしたので、拙者は思わず……

『何故だ?何故カイトのそばにいてやらない?』

「俺にはまだやらなきゃいけないコトがある……、ケジメをつけなきゃな。

 それに俺の息子だ!心配ないさ」

空斗は少しさみしげな表情を浮かべて、去って行った――――――……

 

 

 

 

『……そして拙者はなんとか数カ月かけて日本に帰ってきたわけだ

 ペイロンは力を割いてられなかったのだろう、拙者の転移はできない様子だった』

寺原がふむふむと呟いて言う。

「ふむ、「リヴィア」か…… 空斗さんはおそらく時が来るまで自分で保護しておこうと思ったんだね」

『さらにメタルコアを増幅させる「カギ」か…… これでアムグスの殻を破れというのか?』

「しっかしよ、オメガのパワーがさらにアップするなんて無敵じゃねぇか?もう怖いもんなしだろ!」

ギンザがオメガのパワーアップに叫喚するのに対し、ミイネは、

「確かにパワーアップは凄いけど……、カイトのお父さんのやるべきコトって……一体何なのかしら?」

空斗の言動に疑問を抱いた。

「そうか……、父さんに会ったのか」

そんな中、カイトが静かにつぶやく。

「……元気だったか?」

そう聞かれたドラグロイは少し戸惑い、

『あ、ああ…… 健康だったぞ』

「そっか、ならいいや!」

即座にあっけらかんな返事をするカイト。それを聞いた一同は、思わずずっこける。

もはやおなじみの流れとなってしまった。

「おいおい……」

「アンタねぇ……」

『心配……ではないのか?』

ギンザ、ミイネ、ドラグロイは同じことを思っているからか、三人ともカイトに問いただすように向き合う。

「いいや!だって、オレも父さんのこと信じてるからな!」

それを見かねた寺原は、

「はは……。どうやら、心配ってよりもお互いを信頼してるみたいだね」

『うむ。親子とは実によいものだ』

ドラグロイが感心する。

『……さあ、「リヴィア」を見せてくれ』

本題にいこうとオメガがドラグロイへ促すように話す。

『うむ、これだ』

金属製のとても小さなカギをドラグロイは取り出す。

「これが、「リヴィア」か……。これをメタルコアにぶっさすのか?」

カイトがまじまじとカギをみつめ、信じられないような態度をとる。

『カイト。オレを転送してくれ』

「分かった!メダロット、転送!」

オメガがメダロッチから転送される。

オメガはさっそく胸のハッチを開き、メタルコアをとりだしじっくりと見回す。

『……成程な』

かなり気づきにくい小さなカギ穴が確かにあった。

「……さっそく差し込んでみるか?」

カイトが提案する。

しかしオメガはそれを拒否するように、

『……イヤ、一週間後でいいだろう。どういうモノかまだハッキリとしていないからな』

「……そうだね、時限式のパワーアップなら決戦前におじゃんだ」

寺原も同意見だった。

「そうですね…… よし、じゃあ後一週間、気合入れて特訓すっか!」

カイトは平手に拳を打ちつけて言う。

「俺たちはロボトルに戻るか…… やるぜ、ヴルム!」

「コル!新型までもうひと踏ん張りよ!」

『了解でさァ!』

『頑張るよ!』

ミイネ、ギンザは奥のステージへ戻っていった。

『拙者が付き合おう。相手がいた方が特訓にはなるだろう』

『……ああ、頼む』

オメガはドラグロイと握手を交わす。

「僕も頑張らないとね、新型の構想も二人のデータで固まってきた」

寺原も気合十分で開発に臨もうとしていた―――――……

 

 

 

……こうして、残り一週間という中……

カイト達はメタルコアの力を引き出すカギ「リヴィア」を手に入れた。

果たして、「リヴィア」の力とは―――!?

そして、空斗のケジメとは何なのか―――!?

ついに決戦の時――――……

 

 

 

Act23・・・完

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