Act.22「堂々」
なんとかブランク社の幹部、リズを撃退?したミイネ。
時はミイネがリズと遭遇したところに戻り、ギンザは……
「あーチクショウ、アイツら少しはガマンを覚えるべきだな」
『全くでさァ』
カイト、ミイネが去ってしまったため一人公園でヴルムとともに特訓していた。
「この公園の人たちともほとんどロボトルしちまったしなー…… さて、どうするか」
「……相手を探しているのか?」
「おお、まーな…… って、え!?」
その声の主は銀がかった短髪、糸目、そして―――黒いスーツが特徴的な男だった。
「まさか……ブランク社か!?」
「……俺でよければ相手になろう」
男は静かにメダロッチを構える。
「やだね!なに考えてるかわかんねーヤツらに、みすみす手の内をさらして―――……」
「……おじげづいたのか?」
男はギンザの言葉をさえぎり、静かに言った。
そして、ギンザの頭の『何か』がブチッと切れ―――
「……そこまで言われちゃ、黙ってらんねぇ!いいぜオッサン、受けてやるよ!」
『お、親分……落ち着いて……』
「バトルフィールド、展開ッ!!」
ヴルムの言葉は届かず、ギンザはメダロッチを操作しバトルフィールドを展開する。
『いやはや、なんとも……』
ヴルムはしょうがないとロボトルに備え体制を整える。
「……来い、レイジャク」
男はチョンマゲと眼帯をつけたようなひとつ目の頭部、手には釈杖のようなものを手にしたメダロットを転送した。
『……ロボトルファイト』
メダロッチからロボトル開始の音声が鳴り響く。
「先手必勝!!ヴルム、ソードだ!」
『……合点!』
ヴルムは素早く敵の頭上を取り、ソードで斬りかかる!!
「……避けろ」
しかしレイジャクは余裕をもった動作でソード攻撃をかわす。
「何!?」
「レイジャク、左腕だ……」
レイジャクは手に何も手にしていない左腕をヴルムに向ける。すると―――……
『ぐっ!?』
ヴルムはその場から吹っ飛び、バトルフィールドの壁に叩きつけられた!
『ぐはっ……』
ヴルムは壁づたいに崩れ落ちる。
「ヴルム!!」
『ヴルム、右腕パーツダメージ84%、パーツ効果ニヨリ一定時間デキマセン』
「何だと!?」
レイジャクのパーツ効果に驚くギンザを見て、男は―――
「……この左腕は相手が攻撃パーツを使用した後に使える。
そのパーツを対象に攻撃をハネ返し、一定時間使用不能にする効果だ」
……パーツの効果を説明した。
「なっ……」
「……分かったか?」
そんな男にギンザは、当然の反応をした。
「分かったか?じゃねぇよ!なんでワザワザ説明すんだ!」
男はギンザの疑問にさらっと答える。
「……効果が分からないままロボトルを続けられたら、お前の実力が困惑でブレるだろう?
まぁ、冷静さを失っている今でもブレているのだがな……」
「―――!」
確かに、その通りだとギンザは認めざるを得なかった。
ちょっと挑発されただけで攻撃をパートナーと意思疎通しないまま、仕掛けてしまった。
それでは敵に自分のスキをついてくださいと言っているようなモノだ、と―――……
『親分……!いきましょう……!』
ヴルムが右腕を抑えながら立ち上がる。
「ヴルム……」
『見せましょう!ヤツらに!あっしらのチカラを!!』
「……おっしゃ!」
それを聞いたギンザは、自分の両頬を思いっきり叩く。
「ほう……?」
そして息を少し吸い込み、吐くと、
「―――オッサン!ありがとな、俺もまだまだ足りなかったみたいだわ!色々と!」
「……俺はただ、全力を出した相手と戦いたいだけだ。
何も実力が出ていない状態の相手で勝っても、つまらん」
「そういうコトか、正々堂々ってヤツ!?じゃあ、行くぜ!ヴルム!」
『了解!』
ギンザは左腕のハンマー攻撃をヴルムに命じる!
「……かわせ!」
レイジャクはさっきと同じように攻撃をかわそうとするが……
ヴルムは寸前で左腕をピタリと止め、フェイントをかけて攻撃を直撃させた!
『……!!』
『レイジャク、左腕パーツダメージ48%』
「……やるな、だが―――」
そう、がむしゃら攻撃は次の行動まで敵の攻撃が必中かつクリティカルになるという諸刃の剣。
「関係ねぇな!アンタの番が来るまでに、行動を開始すればいいだけだ!」
「はたしてそう上手く行くかな……」
レイジャクは左腕を構え、ヴルムめがけ行動を開始した。
レイジャクの左腕がヴルムの目と鼻の先まで来た瞬間―――!
「……よし!『さくてき』だ!」
素早くヴルムは身をかわし、頭パーツで索敵行動を行った!
『索敵行動開始……一定時間、成功ノパラメータが上昇シマス』
『ふぅ、間一髪でさァ』
「ほう……!」
ヴルムは一息つく。
「おっしゃ、もいっぱついけぇ!」
『合点!』
ヴルムは再び左腕のトンファーでハンマー攻撃を行う!
狙いはもちろん―――左腕だ。
見事に攻撃が左腕に命中した!
『……!』
レイジャクは衝撃でよろける。
『レイジャク、左腕パーツダメージ52%。機能停止』
そして、左腕パーツの装甲が砕け散った。
しかし―――……
「……いいぞ、面白くなってきた、そうこなくてはな」
男は相変わらず余裕をもった様子だった。
「俺もだぜ、オッサン!でもアンタ、物静かそうに見えて結構しゃべるのな」
「フッ……そうでもないさ」
と、言った瞬間―――!
『ぐ……!!』
ヴルムがレイジャクの釈杖に貫かれていた……!
『ヴルム、頭パーツダメージ89%』
ダメージは高く、頭パーツの右側の装甲に深く釈杖が突き刺さるほどであった。
「ヴルム!!」
「……油断は禁物だ」
ヴルムは崩れ、このまま一気に勝負が決すると思われたが―――……!
「……もいっぱつだぁ!!」
「……何!?」
ヴルムは突き刺さった釈杖を右手で掴み、頭パーツめがけてトンファーを振りかざす!
『うおおおおおっ!!』
レイジャクは釈杖を手放しかわそうとするが間に合わず、鈍い金属音が鳴り響く―――!
『クリティカル!レイジャク、頭パーツダメージ100%。機能停止。機能停止。
リーダー機機能停止ニヨリ、勝者、ギンザ』
レイジャクの背中からメダルが飛び出し、ヴルムもそれに合わせてしりもちをつく。
『ふぃー……流石ですね、親分!』
「うおっしゃぁ!!」
ギンザは拳を掲げて喜ぶ、が……
「くく……お前となら、全力で戦えそうだ。きたるその時を楽しみにしておくよ」
男は相変わらずだった。
「アンタ、やっぱ全力じゃなかったのか……しかし、何考えてんだよ?
いくら正々堂々戦いたいとはいえ、ブランク社の人間だろ?」
フッと鼻で笑うと男は、
「社にも色々な人間はいるさ……
……言い忘れていたが俺の名は『ゼンジ』だ。海藤ギンザ、
お前のロボトルは実に面白い……せいぜい腕を磨いておいてくれよ、失望させてくれるな」
男、『ゼンジ』はそう言うと手をひらひらと振りながら去って行った。
『親分……』
ヴルムは何か伝えたそうにギンザを呼ぶ。
「ああ、分かってる。このままじゃ……マズイな」
そう、いくら勝ったとはいえゼンジはパーツをすべて使用していないうえに、
パーツの効果まで教えてもらってそれでほぼ互角という現状。
「寺原さんに……頼んでみるか」
ギンザもミイネと同じく、一つの決意をしたのであった―――……
「……まぁ、つーことがあったんだわ」
「あたしも」
時はもどり、二人が幹部と出会った日の翌日……
やはりカイトに話しておこうと、各々話をしたのであった。
「そか……オレも混ざりたかったな」
カイトがぼそっとこぼす。
「え?何か言った?」
「イ、イヤなんでも?それより何を寺原さんに頼むんだよ?」
ミイネの問いかけにカイトはあわててごまかす。
そしてギンザが答えた。
「そりゃモチロン―――新型だろ」
「うん、あたしもそう考えた」
新型という言葉にカイトは目を輝かせて、
「いいなぁオイ!オレも欲しいなぁ」
その発言に二人は声をそろえた。
「「お前がいうな!」」
はたして二人の考える『新型』とは―――!?
Act22・・・完