メダロットA第二十話

Act.20「自覚」


公園でロボトルの特訓をした後、駅前のケーキ屋へと向かったミイネであったが・・・

そこに待ち受けていたのはブランク社の刺客、リズという人物だった。

急にロボトルを挑まれ、焦るミイネであったが・・・

「メダロット、転送!」

ミイネのメダロッチから目がついた帽子が特徴的な魔女型メダロット「ウィードゥ」が転送されてきた。

リズのメダロットも帽子をかぶっている。道化師―――ピエロ型のメダロットだ。

体をクネクネさせ、落ち着かない様子だった。

「行くわよコル!なんだか分かんないけど、ケーキを横取りされたのは腹が立つわ!」

『ミ、ミイネちゃん……』

リズはそれを見かねると、

「そうこないと面白くないってワケ!フィールド、展開!!」

リズはメダロッチを操作し、バトルフィールドを展開する―――!

同時に、ケーキ屋の前にいた人達がざわつく。

離れていく者もいれば、見物しようとしている者もいた。

『バトルフィールド展開シマス…… 今回ノフィールドハ「さんち」デス……』

「浮遊タイプには関係ないハナシね……」

「まぁそれは得意な地形がないってコトだけどねェ」

リズが口をはさむ。

カチンと頭にきたミイネはつい声を荒げて言い返す。

「分かってるわよ!そんなこと!」

『―――ロボトルファイト』

そうこうしているうちにロボトル開始の合図が鳴り響く。

「スキありぃ!レフス!」

レフスと呼ばれたピエロ型メダロットは即座に右腕に張り付いたカードを取り外し、コルに投げつける!

不意をつかれたコルはかわす事が出来ず、カードが左腕に直撃した!

「コル!!」

しかしカードは貼りついただけで、特に損傷が見当たらなかった。

『あ、あれ……!?』

「なんだぁ、ハッタリじゃない!」

安心したミイネはコルに指示を繰り出す。

しかし、何故かリズは口元をゆがませ、にやけていた。

「よおっし、コル!スタティック!」

『うん!』

コルがレフスにスタティックを放とうとした瞬間―――!

「ドカーン!」

リズが急に叫ぶ。

するとコルに貼り付いていた左腕のカードが爆発した!!

『っ……!?』

「何!?」

『コル、左腕パーツダメージ100%。機能停止』

おもわずコルは爆発で煙が上がる左腕をかばい後ずさる。

レフスはケタケタと声を上げずに笑うしぐさをする。

「あっはっはっはっは!ビックリしたでしょ!?」

「時限爆弾ってやつね……!!」

「アハハ、だいたいあってる!」

リズは笑いながらも説明する。

「アンタがアタシの言葉に挑発されたスキにカードを貼り付けさせてもらったってワケ!

 そんでこの爆弾は特殊でね、カードをくっつけたパーツを使用すると爆発する仕組みになってるワケ」

「そ、それじゃあどうしてあたしが左腕パーツを使うって……」

あわてふためるミイネをよそに、リズはさらに舌を滑らせる。

「カンタンなワケ。アンタは頭に血が上って攻撃を仕掛ける……

 パーツのデータは過去の戦闘で大体分かってるから…… 

 まずタイムアタックは始まったばかりだから使わないでしょ?

 頭パーツの転倒はまず使わない……すると選択肢は左腕のスタティックしか残ってないってワケ」

「……!」

(パーツの効果がバレてるなら絶対あたしが不利じゃない!でもそれを差し置いても……)

ミイネは何も言えなかった。

いくらだまし討ちとはいえ簡単に引っかかり冷静さを失っていた自分に対し、

相手はかなり冷静に自分を分析していたからであった。

「あたし……なんて情けないの……」

ミイネはその場でガクリと膝を落とす……

「ちょろいワケ!アッハッハッハ!!」

勝利を確信したリズであったが―――!?

『まだ行けるよ……ミイネちゃん……』

コルが戦闘の態勢を整える。

「コル……」

リズはムッとした顔をすると笑うのをやめた。

『これからじゃない!あきらめないで!!』

力強く叫ぶコルに、ミイネは―――

「……そうね」

地面につけていた手に力を込め、立ち上がった!

「まだ負けたわけじゃない!」

予想外だったのか、リズは頬をふくらませる。

「なんだぁ、つまんないの!じゃあ今度は確実に仕留めてあげるワケ!」

「……ありがとね、オバさん」

急にミイネがつぶやく。

「オ・・・オバ!?」

「あたし、足りなかったみたい…… 世界を救うって覚悟と…… 自覚が……ね!

   こっからが、本番よ!」

リズはフン、と鼻を鳴らす。

「あっそう…… ま、どーでもいいコトなんだけど」

リズはそのまま続ける。

「オバサンってのは訂正して欲しいワケ。こう見えてもってのはおかしいけどまだ歳は2―――」

「今よ!コル!」

ここぞと言わんばかりに言葉をさえぎりミイネはコルに指示をする!

右腕をレフスに向けてタイムアタック攻撃を仕掛けた!

「!?」

タイムアタックの波動がレフスの右腕にヒットした!

『ギ……!』

『レフス、右腕ダメージ50%』

レフスはそれまでケタケタと笑っていたが、流石にダメージを受けるとのけ反りつつ右腕を抑えた。

「……フン!アタシの戦法!?通じると思ってんの?」

「やっぱ結構装甲は薄いみたいね……」

ミイネはブツブツと独り言をつぶやく。

「まぁ何考えてんのか分かんないケド、これで終わりってワケ!レフス!」

レフスは左腕のカードをはがし、コルに向け投げつけようとしたその瞬間―――!

『―――!?』

レフスが勢いよく足を滑らせ、転倒した!

「な、何!?」

「かかった!」

ミイネはコルに素早くタイムアタック攻撃を命令し、右腕に向け放った!

レフスは転倒している体制を立て直すヒマもなく右腕に攻撃が命中した!

『ガ……!!』

『レフス、右腕ダメージ50%。機能停止』

レフスの右腕の装甲がはじけ飛んだ。

「ウソ……いつ、命令したってワケ!?転倒の行動を……!?」

「ふふん……さっきよ、さっき!これからが本番って言った直後」

そう。ミイネは相手が饒舌なのを利用し、リズが話をしている間に転倒の命令をした。

そしてタイムアタック攻撃を仕掛けて、転倒の命令をしていないように見せかけたのだ。

「そ、そんなの……ヒキョウって思わないワケ!?」

「先に仕掛けてきたのはアンタでしょ」

「うっ……」

ありのままを指摘されリズは何も言えなかった。

「でも、まぁ……この手はもう使わないわ。卑怯臭いし、ね」

「く……!」

ミイネはリズに指さして叫ぶ。

「ここからは真っ向勝負で勝ってみせる!」

それを聞いたリズは突然笑い出した。

「……アッハッハ!面白いワケ!

 伊達にレプリカとは言えビーストマスターを倒しちゃいないってワケね!

 いいワ、トコトンやってあげるワケ!!」

 

 

果たして戦いの行方はいかに―――!?

 

 

Act20・・・完

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