Act2.5「αの名を持つもの」


カオスメダル強奪事件の翌日。

ギンザは、メダロット社を訪れていた。

ギンザの父親が、メダロット社のある人と親密というので、

今日会って来たらどうだと言われ、

立ち寄ってみた、というワケだ。

「でけぇ……無駄にでけえな、ヴルム」

ギンザがメダロット社を見上げて言う。

『親分!早く中へ入りましょうぜ!』

ギンザのパートナーである……「ヴルム」がワクワクした様子で急かす。


コイツは、なぜか子分のような喋り方をする。

だがギンザは長年の付き合いでそれに慣れてしまったらしく、気にしていない。

「ああ!」

入り口のすぐ近くのカウンターで用件を話し、奥へ進む。

「君が海藤 ギンザ君……だね?」

メガネを掛けた、白衣の男が話しかけてきた。

「そうです。そんじゃ、あなたが……」

「そう、寺原だ。お父さんから君の事はよく聞いてるよ」

「どんなです?」

ギンザは少し期待しながらも返す。

「ロボトルが強い……とかね」

ギンザは嬉しかったのか、

「そんなことないっすよ〜」

とデレデレしながら返す。

『親分……嬉しそうですね』

「そんなロボトルの強い君に見せたいものがあるんだ。着いて来てくれ」

寺原はかつてカイトと共に訪れた地下室へ移動し始めた。

その途中、ギンザは改修中の壁のドデカイ風穴に気づく。

「な……なんかあったんすか、コレ」

「ああ、それは昨日、君と同い年あたりの子が、トラブルに巻き込まれてね……

 無理矢理しまったあの鉄の扉をこじ開けようとして、貫通しちゃって空いた穴なんだ」

「えぇ!?」

「……メダフォースでね」

(ま、まさかな……)

ギンザの頭になぜかカイトの顔が一瞬浮かんだ。

寺原達は、オメガビートル・プロトの飾ってあった部屋より少し奥の部屋へと進む。

「ここだよ」

するとそこには―――KWGのメダロットがオメガビートル・プロト同様、

分厚いガラスケースで飾られていた。

「『アルファスタッグ・プロト』

 ―――僕が独自開発した、KWG型のメダロットだ」

「すげえ……!KWG型なんて初めて見ました!」

「そこで、僕とこのパーツを使いテストロボトルして、
勝ったらパーツは君のものになるってのは……どうだい?」

「え、マジですか!」

ギンザは嬉しそうに驚く。

「1体は決まったし、あとコイツのテスターを探してたところなんだ」

「よっしゃ、やるか!?ヴルム!」

『やりましょうぜ、親分!』

「よし!じゃあ、ロックを解除しよう!」

ガラスケースからアルファスタッグ・プロトが出てきた。

ギンザはすかさずメダロッチからメダルを取り出し、

アルファスタッグ・プロトへと装着する―!

『―――アルファスタッグ・プロト、起動開始シマス』

「どうだ?ヴルム」

ヴルムはその辺りを歩き回ったり、体の動作を一通り確認すると、

『前の体とは段違いに動きやすいですぜ、親分!』

「そうか!よかったな!」

『はい!』

寺原もメダロットを転送しようとするが、

「ここでは少し狭いね……移動しようか」

と言うと、ギンザと共に1Fへと上がり、

ロボトルするのにうってつけな広場のある部屋へと移動した。

巨大なモニターがあり、設置されている複数のカメラから広場の映像が、

さまざまなアングルから映し出されている。

「少しばかりデータを取らせてもらうよ。さあ、始めようか!」

寺原はメダロットを転送した。

転送されてきたのはタガメ型メダロット、『ウォータービート』だ。

「よっしゃあ!バトルフィールド、展開!」

ギンザは勢いよくメダロッチを操作し、バトルフィールドを展開する!

『バトルフィールド展開シマス……

 今回ノバトルフィールドハ「スタジアム」デス……』

『相性はいい方ですが油断は禁物ですぜ!』

「ああ、分かってる!」

「頼むよ、オプス」

寺原のウォータービートのメダルの名前はオプスというらしい。

自分のパートナーメダルであるかは、分からないが……

『はい、マスター』

バトルフィールドが展開し終えた所で―――

『―――ロボトルファイト』

「まずは、ソード攻撃を仕掛けろ!」

『了解!』

ヴルムは接近し、ウォータービートの右腕を切りつける!

「くっ!」

『オプス、右腕パーツダメージ57%』

だが、それを気にしないように寺原は即時に指示を出す。

「オプス、頭パーツ!」

『了解、行動『充填吸収』を行います』

充填吸収により、ヴルムの充填時間が遅くなり、

オプスの充填時間が早まる―!

「まずいぜ……!」

「メダチェンジだ!」

行動が早くなったオプスは、メダチェンジを行う!

潜水タイプから飛行タイプとなり、機動力がUPする!

「くそっ、ヴルム!ソードだ!」

『了解でさァ!』

ヴルムはオプスに向かってジャンプし、切り付けようとするが……

オプスはひらりと避けてしまった。

「よし、今だ!ドライブC!」

オプスはヴルムへ向け、飛びながら接近する!

オプスのドライブCのがむしゃら攻撃ホールドが、

すれ違いざまに空中でヴルムの右腕部に命中した!

『ぐあっ!』

『ヴルム、右腕パーツダメージ100%。機能停止。

 別のパーツに貫通!脚部パーツダメージ27%。

 症状「そくばく」が付加サレマシタ』

「ヴルム!!」

『やりますねェ……』

「どうだい、なかなかコイツもやるもんだろ?」

『なかなかとは失礼な』

オプスが寺原に即座にツッコミを入れる。

ギンザは少しうーんと唸り考えると、ある決断をした。

「こうなったら、アレいくか!」

『アレですね、ですが……』

「そんときゃ、俺たちの負けだ!」

『……分かりました!あっしも覚悟はできてまさァ!』

「何か秘策があるみたいだね……よし、ドライブBだ!」

「了解」

オプスは再度ホールド攻撃を仕掛ける―――!

「ヴルム!お前の機動性、見せてやれ!」

『合点でさァ!』

オプスが空中から下降し、接近する―――!

そしてまたすれ違いざまに攻撃を喰らわせようとするが、

ヴルムは紙一重でかわした!

「おっしゃあ!」

「流石にやるね!聞いたとおりだよ」

『腕は確かなようです』

それと同時に、メダロッチからメッセージが伝わる。

『「そくばく」及ビ「充填吸収」ノ効果ガ解消サレマシタ』

ギンザはこれを待ってたと言わんばかりに、

「ラッキー! よっしゃ!アレ行くぜ、ヴルム!」

『了解!メダフォース、「すいしんアップ」発動!』

「すいしんアップ」の効果により、ヴルムの移動速度がUPする!

「行くぜ!左腕のトンファーで攻撃だ!」

『了解!』

ヴルムは飛び上がり、左腕パーツのトンファーをオプスに直撃させた!

『く……』

オプスがダメージのせいなのかよろめき、滞空高度を下げた。

『オプス、ダメージ42%。残リ装甲40%』

「まだだ!もう一発、ぶちかませぇ!!」

『あいさァ!!』

ブルムは着地と共に再びジャンプ、トンファーをオプスへと

地面に落下すると同時に叩き込む―――!!

『うぁっ……!!』

まともに食らったオプスは地面に叩きつけられ、背中のメダルが飛び出す。

『オプス、ダメージ40%。機能停止。機能停止。

 勝者、ギンザ』

ギンザはおもわず喜びながら、ヴルムを抱える。

「やったぜ、ヴルム!」

『ハイ!親分!』

寺原は軽く拍手をした後、

「スゴイな!豪快な戦い方だね……!
おめでとう!

 これでアルファスタッグ・プロトの パーツは君のものだよ!」

「はい! 良かったな、ヴルム!」

『ええ!』

「ただ、もし異常があったら来てほしい。試作機だからね」

ギンザは頭を下げる。

「はい!今日は色々ありがとうございました!」

「ああ、気をつけて帰るんだよ」

「はい!」



ーそして2日後ー

ギンザは、ヴルムとともに小学校に向かう所であった。

「ししし……これでさらにカイトをボコボコにできるぜ!」

『……かわいそうになってきやしたぜ』

「なあに!それでも勝とうとやっきになるぜ、あいつはよ」

『カイトの旦那なら……そうでしょうねェ』

ギンザは上を向き、考える。

(まさか……アイツってことはないよな、もう一人の……)

しばらくそのままボケーッとしていたためか、ヴルムが言う。

『何ボーッとしてんですか?親分!チコクしますぜ!』

ギンザはハッと気づき、

「あ、ああ、悪い……行くか」


ギンザ達は小学校へ向かって歩いていくのだった―――



Act2.5…完

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