メダロットA第十九話

メダロットA第十九話

Act.19「狭間と強襲」


俺は、ギンザ。

ペイロンの空間で半年間も眠っていた俺たちだけど、どうして別空間に閉じ込められていたのか、

その理由のひとつがようやく分かった。

どうやらアムグスは動きを止められる間、世界中からメダルを吸い寄せていた?らしい。

想像がしにくいったらねえ…… 

奴らは何が狙いなのか分からない。 

よくは考えられないことだけど、ペイロンは俺たちのメダルと安全を守るため……

こんな子供の俺たちに希望を託したってことかな?

閉じ込められてた半年間ってのはでかくて、

あの研究所が襲撃されたのが8月だから、2月になっちまってた。

親が心配してるんじゃねえかって思ってたら、意外に何も言われなかった。

おかしいと思って聞いてみると、逆に何言ってんの?とか母ちゃんに言われちまった。

どうやら俺は半年間、普通に過ごしてたそうだ。

カイトもミイネも同じ反応だったそうだ。

これもペイロンの力なのか……?

そんでなんだかんだで、一週間が過ぎた。奴らはこの一週間何もしかけてこなかった。

俺たちはというと……

 

 

「ギンザ!てめえ手加減しろよ!!」

「手加減したら特訓になんねえだろうが!バカ!」

公園でロボトルの特訓をしていた。

しかし、カイトはギンザに連戦連敗している状況であった。

「おかしい…… なんでだ…… オレ、ブランク社の幹部倒してんのに……」

カイトがそう言うのも無理はなかった。

ミイネにも惨敗を喫していたからである。

「本番に強いって、まさにこのことね……」

ミイネが呆れる中、オメガがつぶやく。

『……マグレだったんじゃないか』

「なんだとお!」

二人はケンカを始める。

それをよそに、ギンザはいつもと変わらない晴天の空を見上げて言う。

「しかし、後3週間で何とかしないと世界がどうかなっちまうなんて…… 考えられねえよなぁ」

「そうねぇ……」

しばらくケンカが続き、ようやくおさまったと思うと、

「くっそお、今日はもういいや! うどん食ってくる!」

そう言うとカイトはオメガをメダロッチに転送する。

『やれやれ……』

なんで?と二人は聞こうとしたが、理由は何となくわかった。

……ヤケ食いという奴だ。

「そうか、行って来い。俺たちはもうちょっと頑張るわ」

「あ、あたしもちょっと駅前の―――」

と、ミイネが言いかけて移動しようとすると、ギンザがミイネの肩をひっつかむ。

「もうちょっと付き合うよ、な!?」

いいよるギンザにミイネは渋々と、

「分かったわよ…… あと一回だけだからね」

「分かった、じゃあまた明日な!」

とカイトは言い残して凄い早さで駆けて行った。

 

 

 

〜数分後〜

カイトは行きつけの「たぬき庵」に着いた。

たぬき庵はうどん系の飲食店なのだが、

美味しくリーズナブルな価格とボリュームで、若い世代にも注目されている。

しかしカイトのような小学生が利用するのはやはり早すぎるということで、

店では注目の的である。

だがいくら安いとはいえ、少ないおこづかいの上限を超えてしまうので、

毎日のように来ることはできない。

今日は学校がお昼までだからちょうどよかったのだが……

 

カウンターの席に座ると、カイトはぶっかけうどんを頼んだ。

『しかし、どうしてぶっかけうどんなんだ? 具がのっていたほうがよくないか』

と、オメガがいつか聞いたのだが、

「バカ、このシンプルさがいいんじゃないか」

と、カイトが答えた。

注文したぶっかけうどんが来ると、カイトはまずだしを飲み、めんをすすって食べていく。

どうやらこの食べ方がセオリーだそうだ。

終始ニコニコのまま、あっという間に完食してしまった。

「ふうー、食った食った…… ボコボコに負けた悔しさが飛んじまったぜ」

『全く…… こんなことに金を使うんだったら、オレのメンテにだな……』

オメガがぼやく中、カイトはふと横の端っこに座っている男に目をやった。

その男は、黒いスーツで比較的若く、銀がかった短髪、糸目なのが特徴的だった。

男は注文したぶっかけそばが来ると、だしをすくって飲んだあと、そばをすすり始めた。

そう、カイトの言うセオリー通りに食べ始めたのだった。

「やるな、あのおっさん……」

その男をおっさんと呼ぶにはまだ早いのだが、カイトは思わず口にしてしまった。

そして男は食べ終わると手を合わせて一礼し、すぐ勘定をして出て行った。

『あいつ……』

オメガが急につぶやく。

「どうしたんだよ、オメガ」

『イヤ、何でもない。オレ達も出よう』

カイトは勘定をすませ、店を出るのだった。

 

 

 

 

「……もーギンザってばなかなか帰してくれないから遅れちゃったじゃない!」

ミイネは走っていた。駅前のケーキ屋に向かってだ。

人気の商品は早く買わないと気が済まない。

まさにそんな気分だったのだ。

『まぁまぁ、ギンザ君も不安なんじゃない?何かしてないと』

パートナーのコルがなだめるようにして言う。

「そりゃ、あたしだって不安だけどさ…… 着いた着いた!」

ミイネは店に着くと冷ケースを眺める。

そして、目当ての商品があと一個なのを確認し、

購入しようとした瞬間―――!

「これ、くださーい」

と、別方向から声がした。女性の声だった。

ピンク色で、左右長さが微妙に違う髪。

そして黒いスーツに、年齢に合わない幼い顔というのが特徴的な女性だった。

「そ、そんなぁ……」

ガックリと肩を落とした矢先、さっきの先にケーキ購入した女性が目の前にやって来た。

そして、ジロジロとミイネを見まわす。

「な、何ですか?」

「アンタが…… 篠原ミイネ……ってワケ?」

「え!?」

何で自分の名前を?と思った時、同時に気付いていた。

そう。黒いスーツ―――――

「アタシ、ブランク社のリズっていうんだー、よろしくってワケ! ああ、さっそくなんだけどー」

みずから名乗り出ているのにミイネが驚いている間に、

早口にリズと名乗った女性は、さっき購入したケーキの袋を強引に破り、

ケーキを取り出しひとかじりすると――――――

「……痛い目あわせちゃおうかナ!?なーんて!」

リズはメダロッチから、ピエロのようなメダロットを転送してきた。

「なんなのよ、一体……!?」

ミイネもメダロッチを構える――――!

「少しは楽しませて欲しいワケ!あっはははは!!」

 

 

突然襲いかかって来たブランク社の刺客…… 

果たしてその目的は――――!?

 

 

 

Act19・・・完

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