Act.18「救い」


カイトはレインをブランク社の悲しい運命から救うと、オメガと決意する。だが―――

「……笑わせるな!!」

レインはカイトの言葉に対し、激昂する。

「戦いを終わらせるだと……? あの方にお仕えするのは、私の喜びなのだ! ドリィシャ!」

ドリィシャはブレイク攻撃を放つ!

オメガは避けようとするが……

『くっ……!』

『オメガ、脚部パーツダメージ90%』

避けきれず、脚部に攻撃が直撃してしまった。

「フフ…… すぐに全身を破壊してやる」

レインが攻撃を命中させもう一撃としようとする中……

「じゃあ聞くけどさ……」 

カイトは尋ねる。

「なんでそのメダロット…… そんなに悲しそうに戦うんだよ……」

「!?」

レインはドリィシャに視線を向ける。すると―――

ドリィシャはなんと体を震わしていた。まるでこんな戦いなんかしたくないと訴えるように……

「バカな…… もうコイツは感情を持ってないはずだ…… 何故……」

寺原はその様子を見かね、

「まさか……レイン君のメダロットは、ブランク社によって感情の持たない三原則無視のメダロット…… いうならば

 『デスメダロット』に改造されたということなのか……!?」

レインはしばらくの沈黙の後、答えた。

「……その通りだ! だからどうした!計画のためならば、こんなオモチャどうなっても構わないのだからな……」

どうなってもいいという言葉を聞いた瞬間、ギンザが声を荒げる。

「前はそんな関係じゃなかったはずだろ!?だったら!」

「何をバカなことを! 私とこいつの関係は、前からこんな―――……ぐ!?」

言葉の途中で、レインは頭を抱え、苦しみだした。

「何だ!?」

「ぐあっ…… ああああああああああああああああ!!」

レインの頭の中に数々の思い出のような映像が浮かび上がった……

パートナーのメダロットと遊んだり、笑ったり、悲しんだり……

メダロットを道具のように扱っている今では想像できない様子だった……

「嘘だ…… 嘘だ!! こんなものは……!全部……! 嘘だあああああああっ!!!」

顔を手で覆い、その場で膝をついてしまった……

「まさか…… メダロットをぞんざいに扱っていた……

 そんな記憶までラスワールに植えつけられてたっていうの……!?」

ミイネがぞっとした顔をして言った。

「……もういい」

レインが静かに立ち上がった……

「今は!何が正しいかなどどうでもいい! 北条カイト! 私は貴様を倒す!」

レインがメダロッチを身構える。

「やっぱ来るか……! オメガ!」

『ああ! ……ぐっ!?』

オメガの体のジェネレータから煙が噴き出す。

「どうした!?」

『G・S活動時間リミットデス…… 各装甲が5%減少シマス』

どうやらジェネレート・システムの副作用のようだった。

『やはりか…… 高速、高熱でエネルギーが体中を移動するんだ……

 負荷もハンパではないだろうな……』

「時間はねえってことか、分かった!オメガ!耳を貸せ!」

カイトはごにょごにょと小声でオメガに指示を送る。

『フン、お前らしいムチャな作戦だな…… 分かった、一撃で決めて見せる!』

「ドリィシャ!終わりにしろ……!ブレイクだ!!」

 ドリィシャは残された右腕で渾身のブレイクを放った!

もちろん頭部パーツ効果でダメージは倍増されている…… 直撃すればひとたまりもない!

しかしオメガはその場で右腕の銃口をドリィシャに向け構える……

『一点集中……!』

レインはその様子に驚きを隠せなかった。

「避けないつもりか!? 何を考えている!?」

『G・S……最大開放!!』

オメガの体のジェネレータの輝きが増してゆく―――!

しかし向かってくるブレイクは完全にオメガの頭部をとらえている!

「フン……消えろ!!」

『うおおおおおおおっ!!』

オメガは首を傾け、ブレイクをかわそうとする!だが―――

ブレイクはオメガの頭部をかすめる!

「何!?」

『オメガ、頭部パーツダメージ60%』

オメガはほんの少しぐらつくがすぐ体勢を立て直し―――!

『……発射!!』

狙いの付けられたライフルはすさまじい速度でドリィシャの頭部めがけ飛んでゆく―――!

「しまった……! 体制を……!」

ドリィシャは体勢を立て直そうとするが間に合わない!

弾丸はドリィシャの頭部を貫く!!

『……!!』

ドリィシャは前のめりに倒れこむ。

そして背中からピン、とメダルがはじき出された……

『ドリィシャ、頭パーツダメージ100%。機能停止。機能停止。

リーダー機機能停止ニヨリ、勝者、カイト』

「馬鹿な……」

レインはその場で立ち尽くす……

「……うおっし!!」

カイトは思わずガッツポーズを決める。

『ふぅ、全く……ムチャをさせる……』

オメガはその場で座り込む。

「ヒヤヒヤしたけど、凄いね…… 君のロボトルは……

攻撃後のわずかな隙を狙い撃ったのか……」

寺原がカイトのもとへ駆け寄ってくる。ミイネとギンザもそれに続く。

「てめぇ危なっかしいんだよ!」

ギンザはカイトの頭をこづく。

「全くね、あたしヒヤ汗かいちゃったんだから!」

勝ったからいいじゃんとカイトは言い分を立てると、二人はさらに説教を始め出した。

『やれやれ……』

オメガが呆れていると……

「……何故だ?」

レインが立ち尽くし、うつむいたまま言葉を投げかけた。

「何故あんなことができる!? 一歩間違えば負けていたんだぞ!? 何故――――!?」

カイトは頭を軽くかくと、答えた。

「決まってるじゃん! オメガなら絶対やってくれるって信じてたからな!」

「信じる……!?」

「そ! オレたちはパートナーだからな! 信じあって当然だろ!?」

「パートナー……」

オレはあきらめたとも思ったがな、とオメガが言い二人がケンカする中、レインはドリィシャのメダルを拾い上げ、思う……

(私にも、コイツを信じていた時期があったのだろうか…… この二人のように、信頼関係を持っていたのだろうか……)

レインは先ほどの頭痛でおぼろげだが確信したのかもしれない。

本来は、信頼関係であっただろうということを――――……

レインはメダロッチにドリィシャのメダルをセットし、パーツ、ティンペットを転送した。

「北条カイト。私の完敗だ……」

オメガとのケンカをぴたっとやめるとカイトは、

「でさ、これからどうするつもりなんだよ? アンタは」

「真実を確かめる。自分の記憶についてな」

寺原がそれを聞いたとたん、

「まさか、ラスワールのところに行くつもりかい!? だったら―――」

「いや…… まずは、コイツとの対話から始めようと思う」

レインはメダロッチを指さす。

「そっか…… 思い出すといいな、本当の記憶」

レインはうなずくと背を向け、

「北条カイト…… 礼を言っておく…… ありがとう」

そのまま歩き始めた。しばらく見送っているとカイトは息を大きく吸い込み、

「あんたとのロボトルさー!スッゲースリルあんだよな!またいつかロボトルしようぜ!!」

「こ、声でかい…… 耳痛い……」

よほどの大声だったのか、ミイネが耳を押さえて不満を言う。

その声を聞いたレインは横目でカイトの方へ向くと微笑み、手を高く上げて振った。

そして静かに去って行った……

 

――――アリガトウ

 

カイトは突然何か聞こえたように感じ、キョロキョロあたりを見回す。

「……?いま、何か言ったか?」

カイトは一同に確かめる。

「いや、何も言ってないわよ」

ミイネも知らないようだ。

ギンザと寺原も知る由はなかった。

ただ、レインの去った方角から聞こえたような、そんな気がした……

カイトはまあいいかと気にしないことにした。

「しかし……恐ろしいヤツだ、ラスワール…… 自分の部下を作るためには、記憶まで操作するのか」

寺原は身震いを隠せなかった。

「……オレ、改めて決めたよ!寺原さん」

「俺もだ」

「あたしも!」

カイトに続き、ギンザ、ミイネが言う。

「人の心をもてあそぶブランク社もその計画も、全部!!」

「「「潰すっ!!!」」」

『ククッ……』

オメガがひそかに笑う中、寺原は、

「え、えーと…… なんていうか…… その…… うん!

 息が、ピッタリだね…… 三人とも!」

「「「そうですか?」」」

『三バカ決定だな……』

 

 

 

 

こうして幕を開けた、ブランク社との決戦……

タイムリミットは一ヶ月――――

カイト達は、ブランク社の野望を阻止できるのか――――!?

 

 

 

 

Act18…完

       

 

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