メダロットA第十七話

メダロットA第十七話

 

Act.17「悲しみの雨」

 

恐ろしい強さを見せた起動要塞兵器『アムグス』。しかしその実態をペイロンは……

「殻だって!?ンな訳あるかよ!!」

ギンザが思わず声をあげる。

「じゃ、じゃあ殻をまとった状態であんな強さだって言うのか?」

―――あの殻を完全に破壊してしまうと、中の本体が目覚めてしまうのです

『ラスワールがそんな改造を施したとでもいうのか……!』

「それじゃ、どうやって倒せばいいのよ……? 本体は殻を壊さなきゃ出てこないんだし」

ミイネの言うことはもっともだった。

―――私が力を使い、引きずり出します ですが……

「そうか、つまり……」

「寺原さん、どういうこと?」

「殻の状態より、本体の方が何倍もの強さを誇っている、ということじゃないかな」

―――その通りです

「そんなメチャクチャな話あんのかよ……」

ギンザが落胆する……

「でも、やるしかないんだろ? ……オレ達が」

『……そうだ。オレのカラダに埋め込まれたメタルコアがヤツらを倒すカギとなるなら、オレ達が止めるしかない』

「たとえどんなに相手が強くても、かあ…… でもここまで関わって知らん振りなんて出来るわけないし、ね」

するとギンザは突然両手で頬を叩いた。

「そっか……そうだよな…… あーあ、何弱気になってんだ、俺!」

「ギ、ギンザ?」

突然のことにミイネが驚くがギンザはお構いなしに叫ぶ。

「うっしゃあ!アムグスでも何でも来い!俺とヴルムが相手になってやる!!」

「おお、それでこそバカギンザだぜ!」

「うるせーよ、超バカイト」

「なんだと!?」

「やるか!?」

二人はケンカを始めてしまった。

『やれやれ……』

「まったく……どうしようもないわね…… あ!」

そうだ、と言わんばかりに手をポンと叩くミイネ。

「その、半年間眠ってたワケだから食事とかそういう面はどうなってんの? あとお肌の荒れとか……」

―――肉体の状態は半年前から時は進んでいません 眠りについていたと言う実感はあると思いますが……

「そっか、よかったー…… って、え!?」 

何かに気付いたミイネ。それと同時に寺原も、

「た、大変だ!君たち、ケンカしてる場合じゃないぞ!」

「へ?」

「どうしたんすか?」

そう、今いる真っ白な空間が少しずつだが消えようとしているのだ。

『どうした、ペイロン!?』

―――どうやらこの空間を察知した何者かが、消し去ろうとしているようです

「ブランク社だ!ヤツらしかいない!」

「そんな、早すぎるだろ!?」

―――駄目です この空間はあと数分もしないうちに消えてしまいます

「最後に聞かせてくれ!アムグスが再起動するまでの時間は……!?」

寺原がここぞとばかりに質問を投げかける。

―――1ヶ月、です

「半年もかけてそれだけしか一時的に起動を止められないのか……! なんという兵器だ……」

―――時が来れば私の方からまた現れます それまでなんとか―――

ペイロンの言葉がさえぎられ、空間が完全に消えてしまった……

 

 


カイトたちは放り出されるような感じで空間から飛び出してきた。

「いてて…… こ、ここは?」

『オキナミ町だ。戻ってこれたみたいだな』

そこは奇遇にも半年前カイトたちがアムグスと対峙した場所だった。

「おシリ打っちゃった…… 痛い……」

「俺なんか頭からだぜ…… あれ? 誰だありゃ、コッチをずっと見てるけど」

ギンザが指差した先には黒いスーツと青い髪が特徴の女性がいた。

カイトたちをにらみつけるように見ている。

「……!? アイツは……!!」

カイトは思わず構える。

「知り合いかい?」

「知り合いも何も……!!」

『ヤツの名はレイン……! ブランク社幹部の一人だと言っていた……!』

「何だって!?そうか、彼女が電力発電所を襲った……!」

レインがカイトたちに歩み寄ってきた。

「多くの言葉は要らない…… さあ、北条カイト…… おとなしくメタルコアを渡してもらおうか」

「誰が渡すかよ!!」

「フン、やはりそう来るだろうな……」

レインはメダロッチを構え、彼女のメダロットであるドリィシャを転送してきた。

「コレで決着、というワケか」

「望むところだ! 行くぜ!!」

カイトもメダロッチを構える。

「バトルフィールド、展開だ!」

『バトルフィールド展開シマス…… 今回ノフィールドハ『深海』デス……』

「またオレたちにとって不利なフィールドになりやがった……!」

『く……!』

「まさか、アンタ仕組んでるんじゃないでしょうね!?」

「フフフ…… さあな」

『―――ロボトルファイト』

「よし!オメガ!さっそくメタルコアの力で……! えーと……」

『……「センチネル」だ』

「え?」

『あの姿は「センチネル」と呼ぶコトにしよう…… オレが雇われ兵と言うことを…… 過去の過ちを、常に自覚させ戒めるために』

「オメガ君……」

寺原がその悲しみを理解する中、カイトは……

「よし!よくわかんねえケドわかった! センチネルに変身だ!」

一同がずっこける。

「ア、アンタねえ……」

「し、しょうがねえよ、カイトだし」

「はは……カ、カイト君らしいというか……」

「させるか!ドリィシャ!」

ドリィシャの左腕パーツからブレイクが放たれる―――!

『フン、相変わらず軽いな、オマエは…… 来るぞ!』

「分かってる、行くぜ!うおおおおっ!」

ドリィシャのブレイク攻撃が直撃する直前に、オメガの体が光に包まれ―――……

ブレイク攻撃は光にかき消されオメガのパーツは、二対の翼を持ち、各所に緑色のジェネレータが埋め込まれた形態――― 

『センチネル』へと変貌した。

「うっし!G・S(ジェネレート・システム)起動!!」

『G・S発動…… 一部ノ機能ガ飛躍的上昇シマス』

メダロッチの音声とともに、オメガの体のジェネレータが発光する!

「それならば…… こうだ!」

レインはドリィシャの頭パーツの能力、「成功2倍」を使用し、ブレイクをすかさず発射する!

「オメガ!避けろ! アレを食らっちゃただじゃすまねえ!」

『分かっている!』

オメガはとてつもない速さでブレイク攻撃をかわし、ドリィシャの左側に旋回する。

「今だ!」

そしてライフルを発射する―――! 弾丸はドリィシャの左腕に直撃した!

『…………!!』

『ドリィシャ、左腕パーツダメージ100%。機能停止』

「ぐ…… おのれ……」

『よし!カイト!このまま続けて―――』

「……ちょっと待ってくれ、オメガ」

『……?』

突然の制止に、オメガは戸惑う。

「どうしたんだよ、カイト」

「カイト……?」

少し間を空けて、カイトは質問を投げかけた。

「……アンタは、どうしてブランク社に協力するんだ?」

「何……!?」

「どうしてこんな世界を滅ぼすような考えに同意できるんだって言ってるんだよ」

レインはためらいも見せずに答える。

「フン、至極カンタンな答えだ…… それは……私がこの計画のために生み出された存在だからだ」

「何だって……!?ラスワールめ、こんな……」

寺原の言葉をさえぎり、レインは続ける。

「だからこの計画にも疑問を持たない…… 『人形』に迷う感情はいらないと言うことだ……!」

「そっか……」

カイトはうつむきながら答え、そして顔を上げ、決意する。

「……オメガ、コイツ……いや、この人を止めよう」

意外な言葉に、レインは流石に戸惑う。

「随分とカンタンに言ってくれるな…… 今更心変わりしろとでも言うのか、ムダだ!」

「そうじゃねえよ、ただ―――……

 悲しすぎるじゃんか…… 世界を滅ぼすためだけに生まれてきただなんて……!」

「……!!」

『カイト……』

「やろう、オメガ!オレたちでこの人の戦いを終わらせるんだ!」

『……ああ!!』

 

 

 

 

果たしてカイト達は悲しみの雨を止ませることはできるのか―――!?

 

 

 

 

 

Act17…完

       

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