メダロットA第十六話

メダロットA第十六話

意識がハッキリとしないまま、 オレは目を開けた―――

すると、見渡す限りの真っ白な空間があたりに広がっていた……

ここは…… 何処なんだ?

Act.16「記憶」

 

「皆は……?」

カイトは辺りを見回した。

カイトと同じように、ギンザ、ミイネ、寺原が横たわっているのが見えた。

どうやらほぼ同時に意識が戻ったらしく、三人は立ちくらみながらも立ち上がる。

「こ、ここは……?」

「イデデ…… なんかスッゲー頭痛ぇな……」

「ふああ…… ずいぶん長い間眠ってたってカンジね」

―――目が覚めたようですね

直接4人の頭に声が伝わる。

この声の主は―――……

ラスワールが「ペイロン」と呼んだ声の主、そして……

カイト達を眠りへといざなった謎のメダロットだった。

カイトたちの頭上からゆっくりと降りてくるが、その姿は周りを包んでいる光のせいでよく分からない。

「ここはどこなんだ?」

―――この空間は、私の能力で作り出した結界のようなものです

「で、その結界にどうして俺達を閉じ込めたんだ?」

カイトに続きギンザが質問する。

―――それは、『アムグス』からあなた達を守るためです ……半年ほど眠ってもらいました

「半年!? どうしてそんなに!?」

ミイネは思わず驚く。

―――アムグスを一時的に止めるのにそれだけ時間がかかったということです 

「それでも一時的だって……!?」

『……説明してもらおうか』

オメガがひとりでにメダロッチから転送されてきた。

「オメガ!?」

どうやらオメガはとっくに目覚めていたようだ。

『イヤ、まずオレが説明しなければいけないのか』

「そうだよ!オマエなんかヘンだったよな、途中から……」

『……』

「そうか、オレに会う前のことを思い出せたのか」

『そうだ…… もったいぶるようなマネをしてすまなかった』

「ま、まぁしかたねぇよ、状況が状況だったからな」

ギンザがそう言うと、突然ミイネがズイとオメガの前に出る。

「で!?何を話すのよ?あたし言ってないけどすっごく気になってたんだからね!」

『あ、ああ…… 今から話そう』

「……僕も君達には話していないことがまだあるんだ」

寺原がカイト達を見据えて言う。

「真実を聞きたいかい? ……それを知る覚悟はあるかい?」

少しの沈黙の後―――

「―――はい!」

「そうね、もう何が来ても怖いって気がしないかも…… 現にあり得ないコトばっかおこっちゃってるしね」

「俺もっすね、ドンと来いってカンジです!」

「……ありがとう、君達」

『分かった、話そう…… オレの昔の記憶を』

オメガは静かに語りだした―――

 

 

 

 

 

 

―――オレはある国の紛争で雇われた「哨兵」だった

見張り番というヤツだな、牢獄の……

キカイならヒトを殺す所をみても抵抗が無いと踏んだんだろう

理不尽に捕まった民間人の脱獄も見逃すわけにはいかなかった

非常識が常識に変わってしまうほど、ひどい経験をさせられた

そんなある日だ……

珍しく日本人が捕まっていた……

取調べの結果そいつは探検家だった 

名前は「北条 空斗」

陽気な日本人だった…… 

スグに回りに溶け込んでいた

やたらと目立っていたので印象が何故か頭に焼き付いていたんだ……

 

しかし、空斗が捕まってスグに紛争はアッサリと終わりを告げた

民間人は解放された 半分以上は理不尽に死んでしまったがな……

そしてオレは任務を終えたとたんに、記憶を抹消させられたんだ

おそらく外部に漏れる可能性ををつぶすためだろう……

ひどい話だ…… 所詮は一時だけの道具だったのさ

そして、その時分かったんだ その紛争を仕組んだのは…… 

信じられないかも知れないが、ラスワールだった……!

抵抗もむなしく、記憶を抹消されたオレはメダルだけ、どこかに投げ捨てられた……

何年ほど経ったかは分からないが、目が覚めたときには空斗が目の前にいた―――

モチロン記憶を失っていたからヤツのコトは覚えていなかったが、妙に親近感があった

オレは助けてもらった礼をしたいというと、ヤツは息子のパートナーになって欲しいと言った

アイツは近い将来何かに巻き込まれる運命にあるからだ―――とも言っていたし

運命とやらに翻弄されるかもしれない―――とも言っていた

そしてヤツは言っていた――― 「信じたいんだよ、カイトのヤツが運命に打ち克てるかどうかをな」 とな……

そしてオレはカイトの手に渡ったんだ…… 空斗が一度家に帰ったときにな……

 

 

 

 

 

 

 

『―――カンタンに言うとこんなカンジだ』

意外すぎる過去に一瞬静まり返る一同であった……

「雇われ兵、か…… ひでえな……」

『オレは記憶を失ってからは銃火器パーツを使ったことはなかった…… だがカラダが覚えていたから初めから使いこなすことが出来たんだ』

「ああ、オレお金なくてスカイプテラのパーツ使ってたしな、そういわれてみればなるほどだな!」

「な、なるほどってアンタ、今まで気にしてなかったわけ?」

ミイネが思わずつっこむ。

「ああ!気にもならなかったぜ!」

さも当然のように答える。

「ア、アンタねえ……」

「しょうがねえよ、カイトだから」

「まぁ、オレはオメガが何者だろうがかまわねえ!オメガはオメガだ!他の何者でもないさ」

『カイト…… ありがとう』

「しっかし、父さんがそんな事を…… そういやあ、なんか父さんのカンは昔から鋭かったんだよな」

「で、カイトの親父さんは今どこにいるんだ?」

『分からない…… 時がくれば会えると言っていた』

「おじさん、大丈夫かしら……」

寺原は戸惑ったようすで、ブツブツとつぶやく。

「ラスワールが関わっていたのはそのことだったのか……!! だから空斗さんは……」

その様子を見かねたカイトは、

「あ、そうだ!寺原さんと父さんの仲って一体……?」

「う、うん。今から話すよ」

寺原がゆっくりと話し始める……

 

 

 

 

 

 

 

 

僕がブランク社からメタルコアとオメガビートル・プロトの設計図を奪い、研究所を始めたある日のことだった

空斗と名乗る探険家が、訪れてきたんだ

そこで衝撃の事実が発覚したんだ……!

空斗さんは、なぜかは分からないが紛争のあったある国を調査していたらしい

そのある国では、古代文明にまでさかのぼり存在する最悪の要塞兵器が存在する……と

その兵器の名は『アムグス』といい、 その存在を紛争のドサクサにまぎれて探り、

復活させようとしている者がいる、といった内容だったんだ

どうして僕にそんなことを?と聞くと 空斗さんは言ったんだ―――

息子の力になってやって欲しいと

今自分がしてやれるのはそれくらいしかないから、と……

―――僕はそれ以上は聞かなかった

空斗さんの意志がその時確かに伝わっていたから……!

その後僕はオメガビートル・プロトを開発し、カイト君をテスターとして呼んだというワケさ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってことはオレがあの日呼ばれたのは偶然じゃなかったってことですか……」

「うん。予想外のこともあったけどね……
ちなみにオメガという名は、プロトの設計図を見て空斗さんがつけたものなんだ」

「そうだったのか……」

「なるほど、機体の名とかぶってたのは偶然じゃなかったってことすね」

ミイネが少し考えると、

「でも……アムグスがキケンな存在ってことは分かったケド……
あたしたちを半年も眠らせるワケはドコにあんのよ?」

オメガはペイロンの方へ振り向く。

『そうだ…… その理由を聞きたかったんだ……
あわよくばあのまま倒せていたハズ…… 何故だ?』

ペイロンは落ち着いたようすで答えた……

 

―――あの要塞の姿は…… いわば『殻』のようなモノなのです

 

 

 

 

『殻』とは一体―――!?

 

 

 

 

Act16…完        

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